第3章 第二章新しい星の誕生
「本当にいなくなるの」
「はい」
そこで返事しないで欲しいよ。
既に決定事項だと言われているようじゃないか。
「本当は言うべきか悩んだんですけどね」
「言わないで辞める気だったの?」
「まだすぐにというわけではなかったので」
じゃあ、どうして今のタイミングで言ってくれたんだろうか。
「黙っていたままだと万理さんを傷つけると思って。最近の万理さんはじょちょ不安定気味でしたし」
「誰の所為だよ」
「え?」
俺が最近不安定なのは君の所為だよ。
八つ当たりをしているのは解っているけど、俺を不安にさせているのは君だよ。
「傷つけるつもりはなかったんです。でも万理さんがいれば私がいる必要はないと思いますし。来年には社員の採用も増やしますし」
「そんなはずないよ。君がいなくなると環君は悲しむよ。彼だけじゃない…」
「そういっていただけると嬉しいです。私もここが居心地よ過ぎた所為で、本当な万理さんが仕事に慣れたら辞める気だったんです」
「俺が…」
どうして奏音君は俺をここまで気にかけてくれたんだろうか。
これまでずっと労りの言葉をかけてくれて、良くしてくれた。
「どうして…君はどうして俺にそこまでしてくれたの?」
「万理さんは鋭くて鈍い方ですね」
「ねぇ、酷くない?」
「鈍感です。後は考えてください」
こういう時意地悪だ。
話してはくれないし、心の中を見せようとしてくれない。
「それに事務所内にいるよりも離れていた方が良い事もあります」
「え?」
「内からの守りだけでなく外からの守りも必要です」
事務所を辞めても、関わることは辞めないと言う事なんだろうか。
解りにくい説明だったけど、奏音君は何時だって間違った事はしていなかった。
「万理さん私は途中から乗っかった身ですが、私もこの事務所を愛してます。IDOLISH7だけんでなくこの事務所から広い空に羽ばたいて欲しいと思っています」
「うん」
「離れていても私は貴方達を愛してます。それだけは忘れないでください」
真っすぐな瞳で、慈しむような表情で言われると。
何も言えなくなった。