第3章 第二章新しい星の誕生
事務所を辞めるってどういうこと?
「何で!」
「そういう約束でしたので」
「説明して。俺に解るように」
奏音君が事務所を辞めるなんて…そんな。
だって真琴君たちはどうするの?
ようやくデビューしたのに。君がマネージャーをすると思っていたのに。
「当初は、人員がいない事ともあり手伝いを頼まれました。私も勉強を兼ねていましたし」
「勉強?」
「私の本業はご存じですよね?仕立て屋ですので。上司と社長は旧知の中でもあったので」
確かに、奏音君は服飾店で働いてると聞いている。
「律と響と私はビジネスパートナーでもあるんです。社長からの話を頂き事務所で働いていたんですけど…あるプロジェクトに携わって欲しいと言われまして」
「もしかしてそれが今回の」
「そうです。男性アイドルを作る事。そしてそのプロジェクトに紡ちゃんを参加させマネージメントをさせること」
社長は紡さんを一人前にする為にも奏音さんに協力を頼んだのは解ったけど。
でも社長は辞める事を望んでいないんじゃないかな。
むしろ正式に契約を望んでいる気がする。
「まだ紡さんは新人だよ」
「大丈夫です。体制は整えていますし。事務所を辞めてもフォローはしますし、一年先の衣装は用意してます。衣装に関しては問題ありませんから」
「衣装だけの問題じゃないよ…ELYSIONはどうなるの?」
折角デビューできたのに。
彼等を他人に任せるなんて、そんな無責任な事をするなんて奏音君らしくない。
「私が辞めるまでに紡ちゃんを鍛えますし。三か月あれば彼等を売れっ子アイドルにします。私が事務所を辞めることは真琴達も知ってます…だから今年中にそうしてもデビューさせたかった」
だから急いでいたの?
最近、やたらと衣装のデザインを急いだり、営業に行くことが多かったのはその為?
嫌だ。
奏音君がいなくなるなんて嫌だ。
勝手かもしれないけど俺は…
奏音君に傍にいて欲しい。
「万理さん、そんな永遠の別れみたいな顔をしないでください」
「奏音君はたんぽぽの綿毛みたいにふわふわしているから…本当にいなくなりそうだよ」
「うーん。否定しませんね」
否定してよ!
こんな時まで笑って言わないで欲しいよ。