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『IDOLISH7』世界で一番好きな人

第3章 第二章新しい星の誕生



【万理side】


あの日から、俺は奏音君の燃える様な瞳が離れなかった。


『ファンを侮辱する人間にステージに立つ資格はない。ファンを愛せない人間にアイドルを名乗る資格はない』


あの言葉が耳から離れなかった。
普段から温厚で常に笑っている奏音君が声を張り上げて怒るなんて想像がつかなかった。


いや、一度だけ怒られた事はある。
俺が熱があるのに鞭を打って出社して倒れた時だ。

あの時はすごく怒られた。

あの時と同じぐらい…いやそれ以上に激怒していた。


ファンを悲しませるのはアイドルとして最もしてはいけない事。

でもその言葉はまるで自分がその立場だったからこそ言えるモノで。

もしかして奏音君は舞台に立つ側だったのかもしれない。

じゃないと、舞台に立つ側の気持血をあそこまで理解できない。

舞台へのプライド。

そして覚悟を理解しているようにも見えた。

「俺、何も知らないんだな…」

今思えば、奏音君の事を何も知らない。

けれど無理に聞き出すようなことはしたくない。
誰も聞かれたくない過去はあるだろうし、傷つけたくない。

「でも…知りたい」

「何を知りたいんですか」

「奏音君の事…え?」

あれ?
俺は誰に話しているんだっけ?


「わぁぁぁ!」

「万理さん?」

驚きのあまり俺は椅子からずり落ちた。

「大丈夫ですか?万理さん」

「うん…大丈夫」

カッコ悪いな。
思えば奏音君の前ではカッコ悪い所ばかり見せている気が。


こないだは虫が怖くてしがみ付いて慰めて貰って。

他にも色々ある。

俺かなりダサいな。

「万理さん、どうしたんですか?」

「あー、ごめん。俺カッコ悪いね」

「万理さんはかっこいいですよ。時々可愛らしいですけど」

「可愛らしいか…」

あまり嬉しくないな。
よりにもよって俺よりもずっと愛らしい奏音君に言われてしまった。

しかも好きな人に…


「万理さん、本当に大丈夫ですか?具合が悪いなら送りますよ?」

「いや…大丈夫だよ」

「さっき、私の事を知りたいと言ってましたが…何をお知りになりたいのですか?」

「聞いてたの?」

俺の独り言はしっかり聞かれていたみたいだ。



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