第3章 第二章新しい星の誕生
生放送でもあるダンスフェスで音楽が流れない事態になった。
「おい、どうなってんだ」
「クソ、ここまでやるか!」
衣装だけでなくここまでの妨害をされるとは思わなかった。
「ダンスフェスは出来レースかよ」
「いや、主催者はあの藤原さんだ。ありえない」
ダンスを心から愛する藤原さんは卑怯な真似をしないがスタッフの中にいるのかもしれない。
「どうする…このままじゃ」
「音が流せないんじゃダンスは…」
ここまで来て諦めるなんてできない。
どうしたらいい?
どうしたら――。
音が出ない?
「いいえ、ダンスは音が無くてもできるわ」
「待て…音無しでダンスをさせるのか!」
「優れたプリマは音楽額とも体で音楽を感じ取るわ…絶対のリズム感を持つ湊なら」
三人はずっとバックダンサーとして踊り続けていた。
だから――!
「奏音お姉ちゃん…」
「大丈夫よ。貴女の兄貴分を信じなさい」
「でも、音楽も無しだなんて!」
紡ちゃんは真琴がデビューする日を誰よりも心待ちにしていたはずだからツライはず。
でも、彼はこんな事でへこたれる事はない。
「私の弟を甘く見られたものだわ」
「お姉ちゃん?」
「大事な晴れ舞台を汚すなんて」
犯人の目星はついている。
「あら?どうしたのかしら?」
現れたの準決勝で当たった人。
「何だアンタ?誰だ」
「なっ…BLACK CATSよ!何度かスタジオで会っているでしょ!」
「知らねぇ…つーか変な格好だな。囚人のタイツ」
「アリス風よ!」
時々テレビに出てくるけど、最近はあまり出て来てないから知らなかったわ。
「デビューもできないバックダンサーがフェスに出るなんて身の程知らずだったのよ。まぐれで勝ち進んだからって…衣装も破かれたんですってね?」
「本当に可哀そう」
「なっ…」
「ご心配いただきありがとうございます」
紡ちゃんが声を上げようとするも私が即座に口を手で押さえる。
「ですが、音響の故障では仕方ありませんのでお気になさらず」
「フンっ、無様に辞退をするのね?いい気味…」
「しませんよ?」
「え?」
辞退なんてするわけがない。
「ダンスは音が無くても踊れますので」
「何を…え!」
音響が戻らない状態で三人はステップを踏み出した。