第27章 猫舌の君にはまだ早い《後編》◉天喰環※
「しっかし、人は変わるもんやなぁ環」
手のひらサイズのマスコットをふにふにと弄びながらファットがたこ焼きを頬張る
これフード脱げるやん、俺のんよりこだわっとんのとちゃう?、揶揄うように此方を見上げた視線から逃れるように、俺は部屋の入り口まで後ずさった
「グッズ作るんめっちゃ拒否してたやんか」
ポールペンまで作ってるやん、カチカチと音を立てたそれがデスクのペン立てに刺されて
試作品の入った紙袋を抱えたまま、俺は無言を貫いた
「彼女の周りを自分で埋め尽くす作戦かいな」
まぁ順調で何よりや、満足気に頷いたファットの視線がおもむろに机上のスマホに留まる
「ちょい、ファットさんに見してみい」
「は!?馬鹿なのか!?」
くるりと背を向けた身長250センチの巨体、トーク画面が開かれるのと同時に指先から蛸の足を繰り出す
夜電話できる?
会いたい、好きだ
バイト何時まで?
君の所に帰りたい
ぬるりと巻き付いた蛸足が回収したスマホ、衝撃と絶望を噛み締めながら、戻ってきたそれを両手で握りしめる
ガタガタと震えのおさまらない身体が怒りに崩れて俺は床にうずくまった
「携帯を見るなんて・・信じられない・・紛うことなきパワハラだ・・」
「緑の吹き出ししか無いやん」
小一時間になんぼ送ってんねん、1ミリの謝罪もないファットが呆れた声を響かせると滲んだ視界が揺れる
「、彼女を不安にさせていないか不安なんだ・・!」
「別方面に不安やわ」
彼氏っちゅうよりストーカーやな、あかんやつや、げらげらと豪快に笑ったファットが何事も無かったようにまたたこ焼きを口に放り込む
「蛸ちょっと遅かったで、頑張りや」
この状況でダメ出しまで・・!?胃を押さえて呻く俺に差し出された山盛りのたこ焼き
「環は外身頼んないけど、中身はアッツアツやからなぁ!」
不安になる暇ないやろな、ちょっとキショいけど、手のひらサイズのサンイーターがちょこちょこと動かされて
「もう本当に・・やめてくれ・・」
「甘く見てると火傷するぜ、もう一回言うてー!」
「言ったこと無い!!!」
ファットが標準語を使う時はこの上なく悪ノリしている時だ、俺は肩を落としながらまだ熱いたこ焼きを口に放り込んだ