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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第4章 この道、桜吹雪につき。注意。


●小金井 慎二● 〜校庭〜


“鳩”か“鳩以外”か。
それしかなかったオレの頭に、くっきりハッキリ、別の生き物の名前が浮かび上がってきた。
それはまるで、澱んで黒ずんだ空気の中から、浄化されたふわふわの白い雲が、突如として現れたかのように。


そしてその白い雲は…


「う…うぐいす?」


その生き物の名前を象っていた。


「お前よく見なかっただろ。
 いいから一回ちゃんと見てみろ。」


そう言って、今度は伊月が指を差した。
そして、それに対する反応の模範解答を示すかのように。
隣にいる水戸部が、指を差した方向に真っ直ぐ視線を向けたんだ。
2人のその様子から、伊月がご丁寧に教えてくれた生き物の居場所が、オレが使った「あっち」より、ずっと正確で確実なものだと気付かされた。


だから、伊月が示した空間を見ようと。
指を辿ってその先に視線を送る。


「うぐいす…って…」


頭を守っていたビラの山を下ろすのに合わせて、首を捻って後ろを向いた。
首が回らなくなったら、今度は自然と肩が動いた。
ジリジリと音をたてて、コンクリートと靴の底が擦れ始めたら、靴の摩耗を気にしてゆっくり立ち上がった。


伊月が「いいから見てみろ」と言った、小さいか大きいかも分からない、まだ見ぬ確かな一つの命を見逃さないように。
全く同じ色の花を咲かせる木々のなか、オレはよく目を凝らした。


けど、そんな気を使う必要はなかったのかもしれない。
なぜって、拍子抜けなほどすぐに見つけられたから。


溢れんばかりに咲き誇る、ピンク色の芽吹きに姿を隠そうともしない。
それか、隠れたつもりが隠れきれていないだけか。


まぁ…見つかっちゃどっちでも同じか。


その茶色い羽毛の姿は…


「なんだっけ?」


たとえどんなに小さくても、桜の花の背景では、すぐに見つかっちまうだろうから。


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