第4章 この道、桜吹雪につき。注意。
●藤堂 天● 〜校庭〜
私の世界に、再び音楽が流れ出した。
イヤホンを付けるまで、コードを握ぎりしめていた左手は、熱が籠ってほんのり汗ばんでいた。
血液が滞って暑くなった掌を冷ますように、手首をふって熱を追い出す。
ちょっとした爽快感を感じた後。
なんとなしに「右手もやっとこ」と思い、持っていたものを左手に移して右手をフリーにした。
右手を振っても、特に意味はなかった。
その時、左手に移したもの…
だいぶ軽くなってしまったポテチの袋に、ふと目を落とす。
『そういえば、さっきのあれ…
なんだったんだ?』
“さっき”というのは、鶯に献上したポテチの件じゃない。
それよりも、ずっと前に起こったこと…
“ポテチ浮遊&リターン問題”。
あの時…
自由落下のまま落ちていく大容量を追いかける一方、「もうダメだ!」って諦めかけた時。
確かに空中でピタッ、と袋が止まった。
それが見間違いだったとしても、どうやって私の手まで戻ってきたんだ?
見当もつかない。
説明しようがない。
今から種明かしをするには、あまりにいろんなことが起こり過ぎていた。
高校生活始まったばかりなのに、すでに全然フツーじゃない。
『なんか、どっと疲れた…』
特別なことなんて、なにも起きなくていい。
先輩からの懇願も。
後世に残る業績も。
不可思議体験も。
何もいらないから、この新しい世界で。
新しい生活を。
普通に楽しい高校生活を。
そう考えた時。
曲が終わって、次の曲が流れだした。
それは、とびきり大好きな曲だった。
だから、決めた。