第4章 この道、桜吹雪につき。注意。
●藤堂 天● 〜校庭〜
色合いが地味に見えてしまうのは、陰の中にいるからではないのだろう。
『なんだ…鶯か…』
その生き物のサイズ感と、色の配色には見覚えがあった。
私から数メートル離れた地面にいたのは。
「ホーホケキョ」という鳴き声で知られる、一羽の鶯だった。
そうか。
最初から、“鳥”の可能性もあったんだ。
その考えが浮かんだ時。
緊張状態だった私の体は、糸が切れたように脱力した。
安心というものは、これほどまでに開放感を抱かせるものなのか。
決めつけていた。
他の生き物である可能性を考えるより先に、“虫嫌い”が発動してしまったから。
だけど、冷静でいられなくなるのは仕方ないと思う。
再び、私のふたつの目と、鶯の黒い瞳を合わせる。
四肢の自由を取り戻した私を見上げている、この鶯は。
恐らく、私が座り込んだ木にとまっていて…
ビニール袋の音に驚いて、滑空してきたんだと思う。
とりあえず、虫じゃなくてよかった。
『あ。』
目の前の無害で小さな生き物の姿に、安心を噛み締めていたその時。
鶯…別名「春告鳥」と呼ばれる鳥は。
私の目の前を上下に羽ばたきながら、明るみに飛び出して行った。
まるで、私に自分の存在を見つけてもらうのを、待っていたかのように…
私が安心するまで、そこにいてくれたんじゃないかと思うくらい。
鶯は大人しかった。