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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第4章 この道、桜吹雪につき。注意。


●藤堂 天● 〜校庭〜


そうだ。
学校とはいえ、茂みの中に虫の100匹や1000匹いて当然だ。


『ちょヤダヤダヤダヤダ!!』


虫は苦手だ。
つか寧ろ嫌いだ。
種類によっては見るだけで背筋が凍るのに、触れるなんて言語道断だ。


いくら逃げるためでも、茂みに飛び込むなんて作戦を取った自分を恨んだ。
こんなの、虫に対して「不意打ち攻撃して良いですよ」って言ってるようなもんだ!


太陽の光で埋め尽くされた“向こう側”を心配する余裕もなくなり。
木の葉の間から溢れ出るわずかな陽の光を頼りに、木陰に紛れて一人暴れた。


『嘘っ?!付いた?付いた?!
 やめろよそういうの!マジでヤダ!!』


肩にかけたカバンも、手の中のプレイヤーも。
元凶のビニール袋も手放して、勢いよく立ち上がる。
ここまで大事に持っていたはずの、大容量ですら地面に投げ捨てて。


私は両手の甲で、必死に自分の体を一掃した。
この時、掌を使わなかったのは。
触ってしまった時の感覚が、より鮮明になってしまうことを恐れたからだ。


新しい制服に付いてしまったかもしれない虫を、はたき落とす片手間。
グルッ!と周囲を見回した。


『ったく…どこ行った?!
 ほんっっと虫って
 姿見せないのがほんと厄介!!』


正体を表さないまま、私を恐怖に陥れた存在に苛立ちをぶつける。
そんな時…


『この際なんでも良いから、さっさと出てこ』


「出て来い!」と言いかけた私の口は、脚の動きとともにピタッ!と止まった。
それまで、慌ただしく動かしていた2本の腕は、直前の形状を保ったまま微動だにしなくなった。


足元に見つけた虫を、踏まないように取った行動ではない。
事態はもっと単純だ。


数回の回転を繰り返して、私はやっと気づいた。


運良く私の体ではなく、地面に落ちたことを願いながら見下ろした、緑の芝生の上に…


お世辞にも良い色合いとは言えない鳥が一羽。
大人しく、私を見つめていた。


『………』


目が合った…と思う。


『なんだ…鶯か…』


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