第4章 この道、桜吹雪につき。注意。
●藤堂 天● 〜校庭〜
先輩たちの視線が、私から外れたのを確認して走り出した。
左手に持ったポテチの袋を、落とさないようにしっかりと握って。
『ガチ怖ぇよ…!!』
断るには人が増えすぎた!
一人ひとり説得できるほど沢山、私の引き出しに“作戦”は入ってない!
人混みをかき分けて、他の生徒に紛れるように逃げた。
そして、身を隠すように、各部活のブースの後ろにある茂みに飛び込んだ。
これで私の姿は、勧誘で盛り上がっている場所からは完全に見えなくなった…はずだ。
『うわぁ〜危ねぇ…
もう少しで取り込まれるところだった…』
逃げ込んだ先の木陰には、冷たい空気が残っていた。
大きく吸い込んだ呼吸で、喉の奥がひんやりと冷える。
春日と人の熱で温まったは空気は、ここまでは来れない。
木の陰から、先ほどまで歩いていた明るみの方を覗こうと、苔の生えた木の幹に手を付ける。
誰も追ってこないこと。
そして、久しぶりに一人になったことで、安堵のため息を零す。
『助かった~…』
そう言って、木の幹を背に座り込む。
その時だった。
そんなつもりなかったんだけど、相当気を抜いてしまったようで。
私より先に地面に到達したビニール袋が、ガサガサ!と音を立てた。
その音の大きさは、私がいかに乱雑に扱ったのかを示しているようだった。
コンマ数秒前に緩めた気も、一気に締まった。
まさか座っただけで、そんな大きな音が出るとは思わなかった。
敷地内で唯一、静寂を残していた空間に。
突如切り込んでいた耳障りな音に、瞬発的に「ヤベッ?!」と思った。
…それに気を取られたのも束の間。
今度は頭上から、ガサガサ!っという音が落ちてきた。
『うわっ!!』
「今の音で向こう側に不審がられなかったか?!」と思う暇もなく。
ビニール袋が発した音とは、明らかに種類が違うその音に。
私は他の生き物の介入を感じた。
『なにヤダなんか落ちてきた?!!』
そして、その“生き物”の第一候補は…
“虫”だ。