第4章 この道、桜吹雪につき。注意。
●藤堂 天● 〜校庭〜
その時、吹奏楽部のブースに追い詰められていた私は。
片手にポテチとビニール袋。
片手にイヤホンのコードを握り、その手をなぜか後ろ手にしている。
そんな、側から見たらいかにも奇妙な姿を見て、不思議に思ったのだろうか?
横目に捉えた男の先輩が、こちらに向かってゆっくりと近づいてきた。
「その子、見るからに
お前に流されてるじゃないか。
キツい勧誘はご法度だぞ。」
そう言って、キャプテンと呼ばれたその先輩は、まるで私と吹部の先輩を仲裁するように横に立った。
「有望な子を見つけたら
勧誘するのは当然でしょ!
若者こそ、未来の希望なんだから!」
「お前、自分の歳自覚してるか?
それに今はそう言う話ではなくてな。」
野球部の先輩は、そう口にする片手間に。
半身になった私の肩にポンっと手を置いた。
『え。』
そりゃ驚いたよ、純粋に。
見知らぬ男の人に触られたんだから。
でも、そこまで嫌じゃなかった。
一個だけ年上の同じ高校の生徒、ってのが大きいんだと思うけど。
私の肩に置かれた掌は。
大きなその手に似合わないほど優しくて。
それでも、掌から伝わる”気”のようなものは。
確かにスポーツ選手を思わせるどっしりとした強さがあった。
『あの…先輩?』
肩に置かれた手の意味が、ただただ気になる私。
一方で、そんな私を置き去りに、吹部の先輩に視線をおくる野球部の先輩。
目の前の先輩2人は、大喧嘩こそしないものの。
見つめあったその瞳の奥は、両者謂れもない敵対心が潜んでいた。
その時、上級生同士の論争に巻き込まれてしまったのだと自覚した。
勧誘の場において突如勃発して、静かに執り行われる勧誘とは別のもう一つの戦い。
“新入生の奪い合い”ってやつだ…
「頼むから他所でやってくれ~」と泣きそうになったよ。
新入生なんだから勧誘を受けるのはまだ分るよ。
けどコレに関しては、私は無関係だ。
無関係なのに…
手ぇ…置かれてるんだよなぁ…