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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第4章 この道、桜吹雪につき。注意。


●藤堂 天● 〜校庭〜


いま。
この状況から逃げ出すこと。


不覚にも、それだけを考えてしまった。


『か…かり…』

「え?なに?」


試しだ…試しにやってみて。
しばらくしたら、消えるようにそっといなくなればいい。
元からそこにいなかったかのように。


立ち去ることなんて、もう慣れっこだろ。
人の願いを叶えることに比べたら、こんなに簡単なことはない。


だからいまだけは。
この先輩を満足させるためだけに、私がいればいい。


だから言うんだ…


『仮にだったら』


そう言いかけた時だった。


?「サックスを持ったやつが
  一年生を追い詰めていると思ったら。」


呟くように言った私の言葉なんて、簡単に掻き消えて。
代わりに、野太い男の人の声が、私と吹奏楽部のブースを包んだ。


?「随分と沢山の期待の新生を
  掻っ攫っていってくれたみたいだな?
  お前らしいと言う他ないが、
  このまま放っておいたら
  貪り尽くされてしまいそうだ。」

「お前は…」


それまで、何があっても決して逸らされることはなかったのに。
いつの間にか、私に向けれられていた視線は外れて…


吹部の先輩は代わりに、声が聞こえてきた方…
ざっくり言うと、校門側を見つめて眉間に皺を寄せていた。


先輩の見つめる先を、つられるように私も見ると。


「野球部キャプテン!!」

『え?』


確かに、視線を送ったその先には、野球部員らしい服装に白いキャップを被った男の人が立っていた。


本来の私であれば、そんな光景を前にしたら他にもいろんなことを考えられたんだと思う。
だけど、勧誘の言葉に埋もれて麻痺した状態の脳では、こんなことしか考えられなかった。


『人。増えた。』


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