第4章 この道、桜吹雪につき。注意。
●藤堂 天● 〜校庭〜
先輩は両掌を合わせて、私に向かって上目遣いで懇願してくる。
「パーカスの人数が足りてなくて困ってるの!
あなたみたいに、身長の大きい子じゃないと
扱えない楽器もあるから、
入ってくれたらすごく助かるんだけど…」
首から吊り下げたサクソフォンが、宙に浮いてユラユラしていた。
でた!
必殺“人の良心に漬け込む作戦”!!
しかも「あなたにしかお願いできない!」ってアクセサリーまで付けて!
ここで大一番使ってくるとは。
この手の攻撃にはすこぶる弱いんだよ…
だから私も、大一番を使わせてもらった。
『けど、音楽ってセンスですよね?
私に音楽的センスは皆無というか…』
必殺“自分には向いてませんので他当たってください作戦”!!
“音楽”のおの字も知らないド素人に一から教えるより、経験者を取り込んだ方がいいに決まってる。
それを分かってもらえれば、先輩は自然に私から離れていくはずだ。
「でも、音楽聞くんでしょ?!
どんなのが好きなの?!」
『え。』
「ほら!それ!」
そう言って先輩は、私が握るイヤホンを指さした。
イヤホンがあるということは、必然的に音楽プレイヤーもあるわけで…
『いや!これはそんなんではなく!』
やっちまった。
自分の攻撃で首を絞められた。
結果先輩に、「私を勧誘する理由」を与えてしまった。
でもここで諦めているようでは、一生勧誘の沼から抜け出せない。
だから、より効果的な作戦で行くぞ!
もうこれ以上後ろに逃げない!