第10章 チャイムの鳴る前に
●黒子 side● 〜図書室前〜
向かっていた場所から、逆に人がこちらに出てきた。
この時、平然と步を進める藤堂の横で、黒子は目を丸くしていた。
急に出てきた人影に、驚いたからではない。
その正体を、黒子が知っていたからだ。
しかし、リコや伊月ではない。
今この場にいるわけがない人物…
だから黒子は、呆気に取られてしまったのだ。
「どうしてここにいるのだろう?」という疑問から、つい黒子はその人物の名を呼んでしまう。
いや…“名”と言うよりも、
「キャプテン?」
日向 順平(その人)の、“役職”を。
廊下を曲がった先…黒子が向かおうとした場所。
そこでは、リコと伊月が待っているはずだった。
それなのにそこから出てきたのは、その2人のどちらでもない日向だった。
黒子からしてみれば、「どうして?」でしかない。
一方日向は、どこからともなく誰かに呼ばれたことで、戸惑っている様子だった。
そして声の主を探そうと、周囲をキョロキョロと見回した。
そんな日向を見かねて、黒子は再び「キャプテン」と呼びかける。
その横で、何も知らない藤堂が「え?」と黒子に聞き返していた。
黒子の二度目の呼びかけで、日向はようやくその姿を視界に捕らえた。
日向には、黒子が目の前に突如として現れたように見えていたため、驚いて「うわっ?!!」と声を上げる。
「え…っと、お前は確か…」
日向は一度落ち着きを取り戻し、改めて黒子と対峙した。
「黒子…だっけ?」
「そうです。それにしても、」
「「 どうして お前/キャプテン が? 」」
黒子も日向も、文字通り戸惑っていた。
その傍で、事情を全く知らない天が、静かに頭に疑問符を浮かべていた。