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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第10章 チャイムの鳴る前に


●天 side● 〜図書室前〜


音も立てずに、いつの間にか隣にいた黒子に、天は驚きを露わにする。
思えば、入学してからというもの、黒子には驚かされてばかりいるような気がした。


天の中に先ほどの疑問は、もう残されていなかった。
その代わりに、


『どうしてここに?』


黒子が、今ここに居る理由を求めた。


天はその後すぐ「あ、図書室?」と、直感で問い直した。
しかし黒子は、「いえ、そういうわけではないんですが」と濁して、はっきりとは答えなかった。


「それよりも、藤堂さん」

『ん?』

「重くは…ないんですか?」

『え?なにが?』


天はそう尋ねられて初めて、黒子が自分の抱えている冊子の山を、マジマジと見ていることに気がついた。


「そんな重い参考書を何冊も。一人で。」

『え?』


いま天がやっていること…
これは本来、高木が教師に頼まれ、今日の昼休みに済ませるはずの仕事だった。
それを天が、昨日の“お詫び”として、代わることを申し出たのであった。


つまり、本来であれば男子生徒が担うはずの仕事…
言い換えれば、男子生徒にしか任せられない仕事のはずだった。


それを、女子生徒である天が、事もあろうかたった一人でしていたのが、側から見たら異様な光景に見えてしまったのであろう。


しかし当の本人は、「いや、このくらいなら重くもなんとも」と言って、涼しい顔をしている。


黒子はその参考書が、クラス全員分あることを知っていた。
「重くないはずがない」と分かっているからこそ、天のその言葉が、ただの強がりに聞こえてしまった。


「重いですよね?僕が運びますよ。」


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