• テキストサイズ

宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第6章 偶然目があっただけ


●no side● 〜1年B組〜


こうして、天の口内は甘味で溢れた。
文字通り、イチゴ一色に。


濃厚な果実の香りが口の中で渦を巻き、さらなる唾液の生成を助長させる。


ハイチュウ一粒に骨抜きにされた天は…


椅子の背もたれに身体を預ける代わりに、今度は机の上にダラ…っと上半身を預けた。


一瞬で気力の抜けたその背筋に負けないくらい、もの凄く緩んだ、だらしない顔をして。


甘味に緩んだ口元から、「ふぃ〜〜〜…」という変な声が漏れていた。


机に倒れ込んだ拍子に、ガサガサと音を立てたコンビニ袋が可愛く思えるほどに。
彼女のその姿には、女子高生らしい愛らしさなどは微塵もなかった。


…が、今の天にはそんな事を気にするような器量こそ微塵もなく。


口の中で疾うに小さくなったハイチュウを、それでもまだ味わおうと。
舌で追いかけ回すことに夢中になっている。


舌先から連想される果実の艶やかな赤に、自然と瞼が落ちる…


天は、己の中で破片と化した、その小さな欠片を。


追って、追って…


長時間にわたり、弄ばれ続けた果実の名残は。


溶けて、溶けて…


そして。


消えた。


天は深く…


深ぁ〜くため息を溢し。


後には、ただ、


『あみゃ(甘)い…』


…という声だけが、そこに残された。


その時だった。


?「はぁ?」


/ 417ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp