第6章 偶然目があっただけ
●no side● 〜1年B組〜
こうして、天の口内は甘味で溢れた。
文字通り、イチゴ一色に。
濃厚な果実の香りが口の中で渦を巻き、さらなる唾液の生成を助長させる。
ハイチュウ一粒に骨抜きにされた天は…
椅子の背もたれに身体を預ける代わりに、今度は机の上にダラ…っと上半身を預けた。
一瞬で気力の抜けたその背筋に負けないくらい、もの凄く緩んだ、だらしない顔をして。
甘味に緩んだ口元から、「ふぃ〜〜〜…」という変な声が漏れていた。
机に倒れ込んだ拍子に、ガサガサと音を立てたコンビニ袋が可愛く思えるほどに。
彼女のその姿には、女子高生らしい愛らしさなどは微塵もなかった。
…が、今の天にはそんな事を気にするような器量こそ微塵もなく。
口の中で疾うに小さくなったハイチュウを、それでもまだ味わおうと。
舌で追いかけ回すことに夢中になっている。
舌先から連想される果実の艶やかな赤に、自然と瞼が落ちる…
天は、己の中で破片と化した、その小さな欠片を。
追って、追って…
長時間にわたり、弄ばれ続けた果実の名残は。
溶けて、溶けて…
そして。
消えた。
天は深く…
深ぁ〜くため息を溢し。
後には、ただ、
『あみゃ(甘)い…』
…という声だけが、そこに残された。
その時だった。
?「はぁ?」