第6章 偶然目があっただけ
●no side● 〜1年B組〜
天がハイチュウをこよなく愛すのは…
「好物である」ということ以外に、彼女の中に強いこだわりがあるからとも言えるだろう。
“ハイチュウを最高に美味しく食べる方法“、というこだわりが…
天は誰にも話していないが。
その方法というものだが、そう難しくない。
まず、ハイチュウは絶対に噛まないこと。
ソフトキャンディのアイデンティティを早々に全無視しているが、それが大前提だ。
噛まずに舐める…
もっと言えば、舌の上でハイチュウを温めるんだ。
しばらくすると…
暖かくて、トロッとした甘味が一気に襲ってくる。
しばしお預けを食らった人間に、最高の至福を与えるかのように。
温まったそれを舌でコロコロ転がせば、口の中はたちまちイチゴの甘い香りで満たされる。
噛まないだけでいい…
ただじっと…待てば幸せはやってくる。
こうして食すことにより、イチゴ感が忠実なまでに再現されるということに、ある時天は気づいたのだ。
そして、未だ誰にも話せていない理由もそこにある。
・・・・・
それが、少し変態っぽいこだわりであるということに、天自身が気づいているためだ。
だが、一度知ってしまうと辞められないのも確かだ。
真面目な話、天は疲労回復の際、この方法に何度も助けられている。
他の人なら、もっと効果的で最善の方法を思いつくのだろう。
ただ単に、他の方法でモチベーションを保てるほど、天が器用じゃないというだけだ。
だが意外にも、食欲に愚直な天にとってはむしろこの方法は好都合で。
ハイチュウくらいで済むのなら、安上がりでお手軽だったのだ。
以上を、格好つけないで言えば…
ただの“甘味バカ”だ。
“菓子好き”が「菓子食ってる」ってだけの話だ。