第6章 偶然目があっただけ
●no side● 〜1年B組〜
『イチゴか』
そう口にした天の左手には…
大容量ポテチ同様、今朝、コンビニで購入したハイチュウが握られている。
その包装は確かに、“イチゴ味”に違いなかった。
天がそれを、“一発目”という別名で言い表したのは、“イチゴ味”である事を、知る由がなかったからなのだろう。
味違いのハイチュウが、複数個入っているコンビニ袋から、一つだけを引き抜くという状況が。
天にとっては、くじ引きをするのと同じような感覚だったのだ。
しかし、落ち着いたその口調とは裏腹。
天の内情は、今日一晴れやかだった。
と言うのも、“大好物”と称するハイチュウの中でも、天が特別好きな味というのが。
何を隠そう、“イチゴ味”なのだから。
初手で好物中の好物が現れたのは、恐らくただの偶然だ。
仮に何かが働いていたとしても、多少の運があっただけだ。
それでも、封を開ける天の手は自然と早まる。
ハイチュウって、両端の2つだけ決まって取りずらいよな?
封を開けたら一緒にくっついてくる最初の一個と、包装紙の奥の奥の方に詰まって、断固として出てこようとしない最後の一個。
こういう場面において、とにかくスピードに重きを置く天にとって、その2つは天敵と言っても過言じゃない。
だから、今日も変わらず。
封を開けたら一緒にくっついてくる一個目は無視して、簡単に取り出せる二個目を天は手に取った。
そして、紙から取り出したその粒を。
口の中に放り込んだ。