第6章 偶然目があっただけ
●no side● 〜1年B組〜
これは…
紙…?
想定外の出来事に、天井に向けられた天の視線が落ち始める。
未知の物体へと触れたその左手は、逃がすまいとその実態を人差し指と中指でしっかりと挟む。
視線が自分の手元へと移る傍ら、空腹感でも伸びなかった背筋が、椅子の背もたれを徐々に離れていく。
そして、視線と身体…
いずれもコンビニ袋へと向けられ、見逃すなんてあり得ない状況の中。
天は己の左手を、ゆっくりとコンビニ袋から引き出し始めた。
謎に向き合う恐怖感と、「早く知りたい」という好奇心。
相反する2つの感情と共に。
緊張で指先が微かに震えた。
それでも、“その時”はやって来る。
震える指先に共鳴するように、コンビニ袋がカサカサと音を立て。
それを合図にするように…
天の左手が、完全に姿を表した。
4回ほど折り畳まれた紙を、人差し指と中指で挟んだ状態で。
誰がどう見ても、それがレシートではないことはすぐに分かるだろう。
しかし、レシートではないと判断できたからと言って、具体的に何なのかまでは判断出来ないだろう。
天ひとりを除いては。
現にそれまで触覚にのみ頼っていた天が、視覚でそれを捕らえた時。
彼女の中の謎は、忽然と消え去ったのだ。
むしろ天は、それまで気づかなかったことを不思議に思った。
「どうして忘れていたのだろう」と。
それはまるで、初見は確かに超難解パズルだったのに、一度解き方を覚えると、幼稚園児の知育教材のように簡単に解けてしまうのと、同じような感覚だった。
単に忘れていただけで、天にとっては不思議にも謎にもならなかった、その4つ折りの紙の正体は。
先ほど校庭で、先輩の一人から半ば強引に渡されたビラだった。
バスケ部の。