第6章 偶然目があっただけ
●no side● 〜1年B組〜
『…腹減った』
聞こえない程度にボソッと呟いた時には。
天の手は既に、机の上のコンビニ袋へと伸びていた。
・・・
文字通り、手だけだが。
と言うのも、天は未だ身体を椅子に預け、目線も真上に向けたままなのだ。
本当なら、天井を見るのもうんざりだったが。
正直なところ、身体を立てることすら億劫だったのだ。
つまりは、その程度のエネルギーを使うことすら渋るほど、精神的にも疲労しているということだ。
しかし、暗がりで一寸先も見えないってわけじゃない。
天にだって、どこに何があるのかくらいは分かる。
ましてや、自分の腹に収めるものが入っている袋のことなら。
だから、勘と記憶だけを頼りに。
コンビニ袋へと手を伸ばし、中身をガサゴソと漁った。
その時だった、
『ん…?』
天の手が、あるものを捕らえた。
同時に、鼓動と呼吸以外の全ての動作が止まる。
全てを把握しているつもりだった。
そこには、自分が選び、購入したものしかない、と。
むしろ、自分の知りえるもの以外が、入っているわけがない、って。
それなのに、唐突に触れたそれは…
天の記憶には、無い素材だった。
触れるはずのない…というより、そこにあるはずのない。
これは…
紙…?