第2章 第二章迷える子羊
迂闊だった。
最近は体調が安定していたから気が緩み過ぎたのかもしれない。
「待ってください!」
点滴は終わったし急いでここから出ないと。
「レイさん!」
ここで彼に見つかるわけには行かない。
そんなことになったら千にも漏れてしまうわ。
今は会うわけには行かない。
「待って…待ってください」
「はっ…離して!」
ドクン!
しまった…興奮し過ぎた。
「うっ…ゲホゲホ!!」
「レイさん!どうしたんですか!」
逃げないといけないのに呼吸が上手くできない!
「たい…姉さん!」
蹲る私に急いで駆け寄ってくれた薬研。
「姉さん大丈夫か…アンタ、姉さんに何をした!」
「え?姉さんって…」
困惑する百ちゃんを睨みながら無理矢理引き離す。
「薬研!」
「旦那達…姉さんが」
「とにかく医師を」
髭切が私に上着をかけて抱き上げる。
「だから言ったんだよ…一人にするのが心配だって」
「ごめんなさい…」
胸が苦しくてうまく言葉ができなかった。
あんな事で興奮するなんて、やっぱり私はまだふっきれていないんだ。
「あっ…あの!」
「何?何か用?彼女を休ませたいんだけど…」
「要件なら俺が聞こう。兄さんは彼女を病室に」
膝丸が間に入り私はひとまず病室に運ばれることになった。
元はここで入院と通院をしていたこともあり病室に寝かせてもらうことがきでたけど…。
でも、この状況で百ちゃんを一人にするのはまずい。
「君、騒がないと約束するなら…彼女に危害を加えないと誓えるなら来てもいいよ」
「兄さん!」
「正気か旦那」
私の気持ちを汲んでくれた髭切は百ちゃんを病室に入れる許可をくれた。
その間、髭切は私の手を握りながらも大丈夫だと言ってくれた。