第5章 第五章大きなワンコと変なおじさん
ここまで言えば引き下がるだろうと思った。
なのに…
「先ほど、プロデュースをしていると聞いたけど。差し支えなければ教えてもらっても?」
「AWT48というユニットですが」
「えっ!あのご当地アイドル?」
大規模のアイドルユニットでもあるから名前ぐらいは知れ渡っていたかもしれない。
「事務所は何処かに入っているのかな?」
「無所属ですが…」
「無所属…じゃあ、君一人でプロデュースを?」
「手伝ってはもらっておりますが、大体は」
最初は私がすべてしていたけど、今はサブで鳴狐がプロデュースをしてくれているし、マネージャー業務は長谷部に任せている。
「以前から注目はしていたんだ。彼等のステージは斬新かつ合理的だと。その上、見せ方を解っている」
「ええ、狭いステージの特性を生かしていましたし。何より衣装が一曲の間に何度も変わるのが特徴的でした」
衣装はかなり拘り、センターの乱がより可愛く見えるように工夫をしたし。
経費を削減する為に手作りして着回しができるようにしていた。
「当然だよ、彼女は裁縫も得意だしね」
「ああ、俺達の着ている服も彼女の手作りだしな」
いや、別に自慢する事じゃないし。
節約するには手作りをするしかなかっただけなんだけど。
「では、タレントではなくプロデューサーという事ではどうかな?」
「社長!」
「僕としては君ほどの人材はまずいない。事務所に所属とは言わない…せめて臨時でもいいから引き受けてもらえないかな」
諦めてくれると思いきや、意外としつこかった。
「いくら払えるの?」
「え?ギャラかな?」
「この事務所、見たところ小さいけど。高いよ?」
髭切は笑みを浮かべながらも目が笑ってなかった。
「彼女がプロデュースするアイドルは基本、見込みのあるタレントだけ…慈善活動で仕事してたら食べていけないからね?安く見られても困る」
「ああ、安上がりで済むから頼むなら断らせてもらう」
二人はキツイ言い方をするけど。
私も慈善活動でビジネスをする気は毛頭ないわ。
「申し訳ありませんが、お断りさせていただきます」
「零…」
そんな目で見ないで万。
私はもう貴方に不要な人間なのでしょう?
私がいなくても問題ないはずよ。