第5章 第五章大きなワンコと変なおじさん
万が私を食い入るように見るが無視を決め込むも、小鳥遊さんは確信していたようだ。
「もしかして君が大神君が言っていた音楽の天使かな?」
「社長!」
「はい?」
小鳥遊さんの言葉に首をかしげる。
「いやぁ、光栄だね?あのRe:valeのプロデューサーだった人に会えるなんて」
「はぁ…」
「オーラ―があって当然だね。君を見た時、スターのオーラ―を感じたんだ」
いや、私にそんなオーラ―はないのだけど。
もしかして小鳥遊さんは霊感が強かったりするのかしら?
審神者としての才能が誰よりもあると言われたからそのオーラ―と間違えているんじゃ。
「是非君にアイドルになって欲しいんんだけど」
「ダメに決まっているでしょ?彼女をアイドル如きにするなんて許さないよ」
「そうだ、アイドル等で終わる器ではない」
「お言葉ですか…アイドル程度とは!」
黙っていた万が声を荒げるも、髭切は鼻で笑う。
「彼女は祇園でも霧の文字を持つ踊り子だった人だよ?芸能界で一介のアイドルになるなんてご老公が許すはずもないよ。それに今はプロデュースの仕事をしながら家業の手伝いをしているんだ」
「アイドルに等なれば、本家から何を言われるか。それ以前に彼女の名に傷がつく」
京都とは格式と伝統を重んじる。
だからこそ、芸妓だった者も役者にこそなってもタレントになることはない。
何故なら置き部屋の女将に姐さんの名誉を傷つけない為だった。
「申し訳ありません。実家を出た身ではありますが、家の決まりでできにのです」
「そうなのかい?」
「名のある踊りに部隊以外で踊る行為ははしたない行為とされ、出家した尼僧が人前で踊る程破廉恥な行為とされているんです」
特に茶道本家の孫娘である私はそんな真似をすれば親族に何を言われるか解らない。
諦めてもらうより仕方ないし、私も表舞台に立つことはできないのだから致し方ない。