第5章 第五章大きなワンコと変なおじさん
またしても変な人に声をかけられてしまった。
「君達、アイドルになる気はない?特に君…」
「は?アイドル?」
スーツを着た中年ぐらいの男性に声をかけられるも私は戸惑う。
八乙女社長の時のような高圧的な態度はないけど、何故私をアイドルに?
「いや、これだけオーラを感じたのは何時以来かな。隣の君達もすごいけど…君は特に感じるよ」
「フーン、見る目あるじゃない?あの鬼畜外道の銀髪おじさんより目利きだね」
「そういう問題か!」
それって八乙女社長の事?
確かに上から目線で品定めのような目をして来たけど。
「あっ…あの」
「ああ、突然も失礼をしました。僕はこういう者です」
「小鳥遊芸能プロダクション?」
またしても芸能事務所にスカウトされてしまった。
「できれば、話をさせて欲しいのですが」
「申し訳ないけど、それは…」
髭切が名刺を奪おうとした時だった。
「社長、こちらにいらしたんですね!」
え?
この声は。
「ああすまいね、大神君」
大神…
まさか…
そんなことは。
「探しましたよ、いなくなられて…零?」
「万…」
どうして万がこんなところに。
「うっ…」
「主?どうした!」
「ゲホゲホ!!」
まずい、興奮したら息が。
「だっ…大丈夫」
「ゲホゲホ!!」
咳き込む私は落ち着かせようとするも、体は言うことが効かなかった。
目の前に万がいる。
それだけ私の心を揺さぶっていた。
「どうしたの零!」
「触るな!」
「待って…」
私の体調の変化で膝丸は何かを察した。
でも…
違うのよ膝丸。
「とにかく今は休ませた方が良い」
「近くに事務所がある。君達さえよかったら」
「仕方ないね」
家からは遠いし、今日は車で来ていないので仕方なく髭切は頷く。
私はされるがままに小鳥遊プロダクションにお世話になることになった。