第5章 第五章大きなワンコと変なおじさん
お茶の準備をしている最中、光忠が思い出したように告げた。
「あ、しまった」
「どうしたの?」
「乱君がお風呂に入っていたんだ」
「え!」
それって不味いんじゃ?
乱を見て驚かなければいいんだけど、大丈夫かしら?
「お風呂上がったよ!」
「ありがとうございます」
あんまり大丈夫じゃなかったみたいだ。
十さんの複雑そうな表情を見て理解した。
「ボク烏龍茶!」
「君はこっちをどうぞ」
「あ、さんぴん茶」
流石というべきか、お客様のもてなし方を心得ているわ。
沖縄でも良く飲まれるお茶を出し、お菓子も紅包と来るとは。
「サツマイモが沢山あるからね、作ったんだよ」
「いただきます!」
長身の成人男性がワンコに見えるわ。
泣きながら食べている姿はなんともミスマッチだった。
「あー腹減った!」
「厚兄さん、痛いです!頭を掴まないでください」
「お前達、騒ぐな」
そうこうしていると、出かけていた粟田口兄弟の現世組が戻って来た。
「え?厚君に五虎退君に…え?何で!」
現在はアイドル活動をしているので、知っている人は知っているだろう。
うん、驚くのは解るよ。
「あれ?どちら様でしょうか」
「客か?」
二人は二人でキョトンとするも、そこまで驚いていないようだったので助かった。
「ああ姉さんの知り合いだ」
「そうだったんですか。初めまして粟田口五虎退と申します。どうかゆっくりしてくださいね」
「俺は粟田口厚!よろしくな」
咄嗟の薬研のフォローにより二人も会わせてくれて助かった。
「あっ…あの、兄弟って」
「ああ、こいつ等は姉さんの義理の弟だ。俺達は早くに両親が無くなって姉さんが引き取ってくれたんだ。俺は薬研だ。よろしくな」
「よっ…よろしく」
ナイスフォローだわ薬研。
ここで下手に色々隠すよりも怪しまれない。
「もうすぐ夕飯ができるから…君も食べて行って」
「えっ…でも」
「ほぉー?うちの料理人の食事が食べれないとでも?」
「いっ…いただきます!」
だから何で脅すような言い方をするの?宗三!