第5章 第五章大きなワンコと変なおじさん
❁❁❁ 龍之介side ❁❁❁
見ず知らずの女性に泣きつき、あげくの果てに家に上げてもらうなんて俺は何をしているんだろう?
「これは着替えだ。まずは体を温めた方が良い」
「あっ…あの」
東京に来て、アイドルとしてデビューすることになった俺は方言を話すなと言われた所為で、無口になった。
少し話せば、言葉が…
「君、沖縄出身なんだろう?」
「はい…」
「僕はそっちの出身じゃないけど…多少なら解る。だから気にしなくていい」
「あっ…」
歌仙さんという人はい優しい目で落ち着かせてくれた。
「ここにいる連中は地方出身者だから、多少訛りがあっても気にしないよ」
「ありがとうございます」
そういえば零歌さんは沖縄出身なのかな?
本堂でなければそこまでしっかりうちなーぐちの言葉は話せない。
「彼女は関西出身だよ?身内が沖縄出身だから、覚えたんだよ」
「そうなんですか?」
それだけで、すごいな。
「出身地の言葉はそれだけ愛着があるってことだよ。上京した人間が多いこの地では特にね」
地元が恋しいと思うのは俺だけじゃないんだ。
「さぁ、おしゃべりはこれぐたいにして温まりなさい」
「はい、ありがとうございます」
そう言いながら、歌仙さんは出て行った。
それにしても、脱衣場も広いけどお風呂場も広いな。
大浴場みたいだ。
「ん?」
「あれぇ?誰かいるの?」
「は?」
扉を開けると女の子の声が聞こえた。
「えっ…わぁぁぁ!わっさいびーん!」
女の子が入っているのに気づかなかった俺は勢いよく扉を閉めたが…。
「あ、お客さん?大丈夫だよ?入って」
「いや、ダメだ…え?男の子?」
狼狽えていた俺だったが声の主を見ると可愛い男の子だった。
「えへへ、驚かせてごめんね?入ってよ」
「うん…って、乱ちゃん?AWTのセンターの」
よく見ると、アイドルの乱ちゃんだった。
いやいや、男の子だったの?
「ボクの事知っているんだ?嬉しいな…よろしくね?お兄さん」
「よろしく」
これで男。
ありえない程可愛い。
なおに男?
俺の頭はパンク寸前だった。