第5章 第五章大きなワンコと変なおじさん
引っ越しも順調に進む中、冬を迎えた頃。
雨が降り注ぐある日の事。
「…都会ーうとぅるさん」
一人、公園のベンチでズドーンと暗くなる人がいた。
身長が高くてモデルのような人だけど。
かなり目立っている。
「なーにじらりらん!」
泣き出している!!
「何?あの人」
「怖い、目を合わせちゃダメよ」
通り過ぎる人は怖がりながら距離を取っていた。
うちなーぐちを話していたから沖縄の人かしら?
「ふぃーじーやいびーが?」
「はい…って?うちなーぐち?」
「ふぃーじーやいびーが?」
とりあえず傘を差しだした。
すると…
「うわぁぁぁん!地元ぬっちゅ!」
「きゃあああ!」
顔を上げた男性は私を見てしがみ付いた。
そして大泣きをしてしまう始末で、私は困惑しながらも。
名も知らない男性を拾ってしまった。
そして案の定、宗三にお説教を受けたました。
「貴方は馬鹿ですか?馬鹿なんですね?馬鹿です」
「三回も言わないで」
「ホームレスに声をかけ、あまつさえ拾って来るとは何を考えているんですか?これを馬鹿と言わずして何というのでしょう?」
「ホームレス…」
隣でショックを受けているじゃない。
「身なりはきっちりしていたし、大丈夫よ」
「新手の詐欺だったらどうするのです!」
本当に疑り深いわね宗三。
「あっ…あの、すいませんでした。俺は十龍之介と言います」
「私は藤崎零歌と申します」
十さんは土下座をして謝った。
「この度は御迷惑をおかけして…」
「はぁー、もういいです。乗りかかった船ですし。とりあえず雨が止むまでですよ」
それなら最初から許してくれてもいいのに。
「このままではお風邪をめされますので、こちらにお召替えになってください」
「すいません…」
「歌仙、着替えの手伝いを。光忠、温かい飲み物を」
「ああ」
「任せて」
風邪を引かないようにすぐにお風呂の用意と温かい飲み物を用意するように頼み、二人に任せることにした。
「主、彼をどうするの?」
「どうするって…」
十さんがいなくなってからしばらくして髭切が問うた。
「どうもしないわよ」
「そう…」
雨の中拾ってしまっただけなんだし。
一期一会の出会いだとこの時は思っていた。