第1章 第一章始まりは雨の日に
こんのすけの話曰く。
「本霊は分霊と異なりデリケートというか…なんと申しましょうか」
言葉を濁すような言い方をするな。
「要するに僕達を顕現する前に霊力が渇望して干からびるんだよね?干からびた人間じゃ僕達は使えないしね」
「あっ…兄者!」
今、とんでもない事を聞いた気がするわ。
さらりと恐ろしい事を笑顔で言うなんてありえない!
「分家の連中は僕を顕現しようとして相争って自滅して、本当に権力を欲しがる人間って馬鹿が多いよね」
「兄者ぁぁぁぁ!」
「まぁ、そんなこともあって家元。君のお祖父さんが僕達に選ばせるって言ったんだ。まぁ、あの人も顕現するだけの霊力は持ってないし」
「はっ…はぁ」
「政府側も困りまして、現世の刀剣男士は何かにつけて自由過ぎるのです、手に負えず」
ようするに私にすべて匙投げをしたと?
「申し訳ないけど、私には無理だわ」
「えええ!」
「見ての通り私はこの通り体が弱いし、病を患って…余命も僅かだわ。そんな代役果たせないし」
自分で言っていて悲しくなるけどj事実だ。
「いても荷物になるだけ、何の価値もないのよ」
もう私は生きて居たくない。
生きているかちもないのだから。
「そんなことありません。ぼくのあるじさま!」
「さりげなく僕を主張したね」
「兄者…」
私にしがみ付く小さな付喪神様。
「くらくてこわいばしょからあるじさまよんでくださいました。かちがないなんていわないでください」
「私がいれば誰かを不幸にするかもしれない」
「ねぇ?気になったんだけど…誰かに言われたのかい?」
体が強張り、否定をしようとしたけど。
できなかった。
「へぇ?僕の主にそんな事を言ったんだ?何様なの?」
「我ら源氏を所持する主に暴言を吐くとは万死に値する。手始めに始末するか兄者」
何でそうなる!
「いいね、主の憂いを断ち切ればいいわけだし」
「えええ!お待ちください二人共!いかに本霊だとしても、人を傷つけたら闇落ちですぞ!」
「僕がそんなヘマをすると思うかい?」
なんて極端な神様なのか。
こんのすけが手に負えないと言った意味がよく分かった。
彼等の手綱を掴める人がいないのだ。
「主様、後生でございます」
「解ったから泣かないで」
こうして私は審神者になることになった。