第1章 第一章始まりは雨の日に
私の周りに蝋燭で囲まれ念仏が唱えられている。
「生贄か…」
「違う、病が良くなる祈禱だ」
意味が解らない。
このご時世に祈祷をして病を追い払うなんて時代錯誤も良い所だった。
「皆さん!何をされているのです!」
スパンと襖を開ける音が聞こえた。
「は?ぬいぐるみ?」
「管狐のこんのすけでございます。私めはこれより主様の担当としてお仕えさせていただきます。どうぞよしなに」
きつねが正座をして頭を下げる。
「ささっ、どうぞ粗茶でございます」
「これは夢だ。絶対に夢だ…うんうん」
「残念ながら現実でございます。貴女様は当代随一の霊力の持ち主です。ここにいらっしゃる方々は貴女様の守り刀でございます」
未だに頭がついて行かなかった私に管狐のこんのすけはあるDVDを見せた。
「これで貴方も今日から審神者!楽しく理解しよう映像付きです!今なら私のスマホケース付きです」
「はぁ…」
管狐は慣れた手つきでDVDをセットした。
そして始まったのが乙女ゲームらしき映像と趣味レーションゲームらしき内容だった。
『西暦2205年。
歴史の改変を目論む「歴史修正主義者」によって過去への攻撃が始まった。
時の政府は、それを阻止するため「審神者(さにわ)」なる者を各時代へと送り出す。
審神者なる者とは、眠っている物の想い、心を目覚めさせ、自ら戦う力を与え、振るわせる、技を持つ者
その技によって生み出された付喪神『刀剣男士』と共に歴史を守るため、審神者なる者は過去へ飛ぶ――!』
なんとも長い予告と共に物語が始まり大まかに紹介がされた。
「まぁ、ぶっちゃけ言うと。主は霊力が極端に高いし、都合がいいって言うんで無理やり審神者にされたんだよ」
「兄者ぁぁぁ!もっといい方はないのか」
「事実をさらっと言った方がいいでしょ?けど、君は僕達本霊を顕現するだけの霊力がある。現世で僕達を顕現したんだから」
私は今日初めて会ったはずだ。
「正確にはこれだけど」
「これは…お祖父様の宝刀!」
祖父が大事にしていた刀だ。
小さい頃に幾度なく見せてもらった事がある。
私の実家は京都の茶道本家。
幼い頃から芸術に親しむ為に分家筋でも音楽や芸術を学ぶ。
私も例に漏れず学んだ。
けれど体が弱い私は跡継ぎ候補から外れたのだ。