第3章 第三章秘密のプロデュース
歌仙の言葉を聞いて私は反省した。
病気を理由に、霊力を理由にして甘え過ぎていた。
「主様!どうされたのです!」
部屋でうずくまっているとこんのすけが駆け寄って来る。
「えっと…自己嫌悪に」
「こんのすけめにお聞かせくださいませ。ついでお茶請けに稲荷寿司をお願いします」
本当は稲荷寿司が食べたいだけなんじゃないのかしら?
***
「なるほど、確かにありますな」
「どうしたらいいかしら」
「でしたら短刀達と接する機会を増やせばよろしいかと。粟田口の短刀がよろしいでしょう」
「粟田口…薬研の兄弟ね」
少し相談をして見ようかしら?
「小夜?」
「あっ、ごめんなさいあるじさま」
花壇の前で玩具のピアノを弾いている小夜。
「音楽を聞かせたら、花が喜ぶって聞いて」
「これは…」
「万屋で見つけて」
懐かしい玩具のピアノだった。
「でも、どうやって音を奏でていいか解らなくて」
「こっちに座りなさい。私が教えてあげる」
私の膝に小夜を座らせて玩具のピアノを弾きはじめる。
「ここに指を置いてね…」
「はい…」
「これがドの音、これがレ…」
指を重ねながら一緒に弾いて行く。
懐かしいわ。
『ド…レ…間違えた!』
『もう一度弾きましょう』
『うん!』
まだ私が本家にいた頃の記憶。
――千鶴。
「あるじさま?」
「何でもないわ、さぁ今度はもう一度弾きましょうね」
懐かしさ故にボーっとしてしまった。
しばらく片手で練習をしていて気づいたけど、小夜は呑み込みが早い。
指の動きも滑らかだった。
「あー!!あるじさんと一緒にズルい!」
「ちょっと乱!」
「ぼくも…ぼくも混ぜて!」
二人で玩具のピアノを弾いていたら乱が声を上げて入って来た。
「乱兄さんダメですよ!」
「だってぼくだってピアノ教わりたいのに…篭手切さんってば、ドヘタだし」
「兄さん!」
「どうせ俺は…楽器は下手だ」
柱の隅っこでズドーンと暗くなる篭手切。
「ねぇあるじさん!ボクにも教えて!いいでしょ?」
「ダメですよ兄さん!主君の体に負担がかかったらどうするんです!」
乱を止める前田は申し訳なさそうにしていた。
私が知らない所でかなり気を使わせてしまっていたようだ。
過去の私は大馬鹿だ。