第3章 第三章秘密のプロデュース
小夜と乱を膝に乗せたまま玩具のピアノを弾く。
「わぁ!ボクも…ボクも」
「じゃあ、小夜と一緒に弾いてみましょう。手を出して」
「はぁーい」
恐々としていたのが馬鹿だ。
彼等は私に歩み寄ろうとしてくれているではないか。
なのに、こんな長い間私は…。
「次はどうするの?」
「えっと…次は」
二人を膝に乗せたまま音を奏でると何故か視線が痛かった。
「すてぇーじれっすん…」
篭手切が私を食い入るように見ていた。
「ねぇあるじさん!ボクアイドルになりたいんだ!兄弟とゆにっとも組みたいんだ」
「アイドル…ユニット…」
確かに乱は可愛い。
そんじょそこらの女性アイドルよりも可愛い。
顕現したての頃からやたらと可愛い物を好み、衣裳もゴスロリが好きそうだったけど。
「あるじさんぷろでゅーさーなんでしょ?じゃあボクをぷろでゅーすしてよ。アイドルを育てる人の事を言うんだよね」
髭切しかり、宗三しかり。
彼等はどうしてこうも流行に敏感なんだろうか。
「この本に載っているの!」
「あー…花咲すみれさんね?」
ツクモプロダクションの看板歌姫の記事だった。
アイドルらしく煌びやかな衣装でマイクもお洒落だった。
「これまいく!」
「駄菓子屋さんで見るあれか…」
子供の頃よく見かけた玩具のマイク。
これでアイドルのマネをしていたのだと思うと悲しくなった。
「そんなにアイドルになりたいの?」
「うんなりたい!」
神様がアイドルになれるのか?
いや、基本本丸から出る機会はないから誰に見てもらうのかな?
でもこんな期待を込めた目を向けられたら断れない。
「あっ…うん、いいわよ」
「本当!やったー」
「ズルいです乱兄さん!」
「僕も主にぴあのを教わりたいです!」
何時の間にか五虎退と前田も参戦し、篭手切にいたっては。
「では主はぷろでゅーさーだな!」
一番乗り気だった。
こうして、本丸で私のプロデューサー活動が始まってしまった。
いいのか?これ。