第3章 第三章秘密のプロデュース
百ちゃんからラビチャが来て新しい仕事は大手ブランド会社の新作スーツのモデルに抜擢されたと聞かされた。
「モデルね…」
モデル業界は芸能界よりシビアだった。
アイドルや役者よりも生き残る倍率が高く、専属を得なければ生き残れないのだから。
「主、入っていいかい?」
「歌仙?どうぞ」
「熱が下がったばかりなのにまた起きていたのかい」
遠慮がちに入って来た歌仙はお茶とお菓子を持ってきてくれた。
「ええ…」
「これは?」
「今度百ちゃんがモデルの仕事をすることになって…及ばずながらプロデュースすることになったの」
「主はモノ作りだけでなく人も作れるんだね」
作るって…まぁ確かに似たようなものだけど。
「そうね私はアイドルを作るお手伝いをしていたから」
旧Re:valeの振り付けから始まり、作詞にプロデュースもして来た。
「踊りの先生もしていたから」
「見たかったな、主の踊りを…さぞ雅だったんだろうね」
「どうかしら?」
私に歌仙の言うような雅さがあれば。
私は踊りを今もしていたのだろうか?
体が弱くて、踊り続ける事ができない私は音楽に転向したけど。
結局続けられなかったけど。
「主、そんな顔をしないでくれ。僕は君を悲しませたくて行ったんじゃないんだ…すまない」
「そんな顔をしていたかしら?」
「ああ…けれど、嬉しいよ」
申し訳なさそうにするも歌仙は笑っていた。
「嬉しい?」
「ああ、主は僕に気を許してくれるようになった…いや、言い方が悪いね。君に他意はないのだろうけど」
言葉を失ってしまった。
私は源氏組と織田組以外は積極的にかかわろうとしなかった。
無意識のうちに線引きをしてしまっていたのかもしれない。
元から男性は得意ではなかったが、あの一件で苦手意識を持ち、尚且つ彼等の本丸に来てすぐが私の霊力の高さを調節することが難しかった。
本霊である彼等が傍にいることで安定させてもらったが、度々体調を崩していた。
「私…」
「いや、君が悪いんじゃない。責めている訳じゃないんだ。ただ覚えておいて欲しい…僕達は君の護身刀だ。君を守り支える神である事だけは覚えておいてくれ」
私を決して仇名す者ではなく、傷つける物ではない。
解っているのに私は無意識に距離を取ってしまっていたのかもしれない。