第3章 第三章秘密のプロデュース
千葉志津雄主演の信長は文句のつけようがなかった。
芸能界だけでなく歌舞伎界も注目する程で、多くの業界の巨匠が鑑賞に来ていた。
「うぉぉぉ!信長様ぁぁぁぁ!」
「お館様ぁぁぁぁ!」
そして、なんというべきか。
不動は号泣し、百ちゃんも一緒になって泣いている。
「泣かせるぜ」
「俺、ファンになった!これから俺は信長の会に入るぅぅ!」
なんて単純なの!
しかも二人は手を組んでショップに走っていく。
「不動、走ったらダメよ」
「まったく…」
百ちゃんと意気投合してショップでグッズを爆買いする二人だけど、本丸に戻った後長谷部に怒られないかしら?
「まぁ、僕も感動したよ。流石雅だよ…明智様」
「そこなのね」
まぁ、元の主が細川忠興で、妻は明智光秀の娘だし。
縁があると言えばあるわね。
「それにしても逸話は色々あったのですね」
「一説には明智光秀が謀反を起こしたわけではないと、現代になって証明されているわ」
「僕には関係ありませんけど」
そう言いながら嬉しそうにしている宗三は素直ではないわね。
「主さん…信長は復讐したくなかったの」
「信長はこれまで私欲為に戦はしていないの。なのに裏切られてばかり…けれど復讐はしなかった。何故か解る?」
「解らない」
「きっと復讐しても戻らないからよ」
復讐は小夜を形作る物で否定はしない。
「小夜を否定はしないけど、ある意味信長は最高の復讐をしたのよ」
「最高の復讐?」
「誰にも復讐せずにいたこと」
彼の思いをくみ取ることはできないけど、恨みながら死ぬのではなく、信念を貫き、戦火を終わらせる為の道を作ろうとした。
「信長は、最後までカッコよく散った。彼を侮辱した人からすれば最後まで悔しかったでしょう?」
「復讐…」
「最高の復讐よ」
誰よりも誇りを持っていたのではないか。
信長のおかげで豊臣秀吉はその後に続き、最後は徳川家康が太平の世を築けたのだから。
「これも復讐よ」
「うん…」
何時か、小夜の胸の奥にある復讐が変わりますように。