第3章 第三章秘密のプロデュース
❁❁❁ 歌仙 side❁❁❁
主が好きな桔梗が咲いたので部屋に持って行こうとしたら宗三とお小夜が現世に同行すると耳にした。
芝居を見に行くなんて雅じゃないか。
それにしても僕達の主は少々内気というか大人し過ぎると言うか、滅多に顔を出さない。
体が弱い事もあるが、一部の刀剣男士は不満を抱いている。
しかし、決して僕達を蔑ろにしているわけではないとは解っている。
顕現してすぐに案内された部屋はちゃんと整備されていたし、それぞれ逸話を持つ僕達の為に好みの家具をそろえたりしてくれていた。
膝元のはし曰、主は男性が苦手で体弱い。
審神者になりたての頃はあまりにも病弱で起き上がることもままならない程心身ともに疲れ切っていたと。
家庭環境も決して良いとは言えないらしい。
それを聞いて無理強いはできなかった。
まぁ、不満を思う者は多かったのだが。
「どうして薬研は良くてボク達はダメなの!」
「そういうが俺は主治医として傍にいるんだ」
特に感情を表に出しやすい短刀は不満をぶつけていた。
「大将はまた熱を出しているから…鶴丸の旦那」
「何だよ?」
「絶対に部屋に入るなよ。女人の部屋に無断で入るのは大将の時代でも礼儀知らすらしいからな…まぁ源氏組に折られたいならいいが」
「そんなに怖いのかよ!」
この本丸では数本だけ本霊が存在する。
主と縁が深く、源氏と織田の血筋を受け継いでいる事から彼等が主に加護を与えていた。
鶴丸が主を驚かせようと何度も試みたが、毎回池で屍のように浮いているのを発見されていたのだから。
「まぁ、無理に入って主に嫌われていいなら止めないけど」
「止めとく」
しかし、なんとかして主と交流を持ちたいと思った矢先。
お小夜が不動と一緒に現世で芝居を見ると聞き、好機だと思った。
***
「えっ?歌仙も芝居に?」
「ああ、雅な舞台を生で見てみたいんだ」
その後主に頼み込んだ。
「いいわよ」
「え?本当か?」
意外とあっさり許可が出た。
「ただ、あまり目立たないようにしてくれるなら」
「ああ、任せてくれ!」
これを機会に、主とも交流を深められる!