第2章 第二章迷える子羊
詳しい事情は話せない。
勿論、現段階で千と会うわけには行かない。
「百ちゃん、千には私の事を伝えないで欲しいの」
「えっ…どうしてですか」
「私は、祖父の仕事を手伝っているの。私の実家は名門茶道家でね、日本の統芸能界を仕切る人でもあるの」
「えっ…伝統芸能?」
「ええ、だから海外にいることが多いし、こっちに来ることは少ない…何より、千が騒いだりしたら問題になるの」
実際、私の祖父は歌舞伎界、舞踊界に芸能界にも精通しているのも事実だった。
茶道本家でもありあらゆる事業を行う財閥で資産家でもあるのだから。
「何より私も今、千と会うわけには行かないの。私の自身も今は伝統芸能に携わる身として学ばなくてはならないの」
私はまだ審神者として未熟だ。
お祖父様にもその内実家の事業を手伝って欲しいとも言われている。
だから千と会うわけには行かない。
「もし千が私を見つけたらどうする?」
「すぐに事務所に連れて行くと思います」
「でしょう?無理よ…祖父が許さないと思うわ」
今まで好きにさせてもらえていたけど、芸能事務所に入るなんて反対される。
別に芸能界に対して思う所があるんじゃない。
藤崎家の人間が無名の芸能事務所に入る事が難しいのだから。
「解りました。千にはまだ言いません」
「ありがとう…」
「でも、また会ってくれますか…その、色々教えて欲しくて」
申し訳なさそうにする百ちゃんに連絡先を教えることにした。
たまにだけど現世に帰って来ることがあるので、時の政府の息のかかった施設やホテルで会う約束を取り付けた。
「どんだけ馬鹿なのです!」
案の定、本丸に帰ったら宗三にこってりお説教を受けました。