第2章 第二章迷える子羊
❁❁❁ 髭切side ❁❁❁
主が精神的な苦痛を受けた理由。
目の前の人の子と無関係とは思えない。
だって発作を起こす程だから。
直接でなくても関係しているのは確実だ。
「正直、君が彼女とどういう関係なんてどうでもいいよ。けど、彼女を精神的に追い詰めた原因なのは解った」
「あっ…」
「図星だろ?これでも観察力はある方なんだ。これ以上彼女に精神的な苦痛を与えたくない…そうでなくとも今の彼女は病気で苦しんでいるんだ」
「病気…」
この顔を見ると何も知らなかったんだろうね?
特に親しい中じゃないのか。
「そんなことも知らない仲なら、いいよ。どうせもう会うこともないし」
「待ってください…バンさんは何処にいるか知りませんか!」
「知らないわ。私には何も言わずにいなくなった…そもそも彼は千しか眼中になかったのだから」
「そんなはず…」
「そうよ。ずっと千だけを見ていて。私の事なんてたまに振り返るだけ…まぁ戯れに付き合ってくれただけかもしれない」
バン?
時折君が泣いている時に読んでいた男か。
「フーン、そいつ君の名に?」
「ただの知り合い」
「そんな!バンさんは零さんの大切な人じゃないですか」
「大切なら何も言わずに失踪する?結局私は要らないのよ…千も私を要らないと言ったわ…体が弱くて出来損ないの私なんて!」
「姉さん…」
「そんなことを言ったのか」
へぇー?
君をズタボロにした男が千って言うんだ?
ここにいないのが残念だよ。
斬ってやれたのにね。
「もう千とも会わないわ。会うわない方が良いの…私の事は言わないで」
「そっ…そんな」
「百ちゃんには申し訳ないと思っている。でも彼は見つけられる事を望んでないわ…九条さんから千を守る為に去ったんだもの」
主の表情が今にも泣き崩れそうだった。
九条という名を呼んだ瞬間に強い憎しみを持ったようだった。
「あの男には気を付けて…ゲホッ、ゲホッ!!」
「姉さん、とにかく今は休んでくれ。迎えを呼んでおいたから」
「ごめんなさい…」
そろそろ限界だ。
「悪いけど出て行ってくれるかい?」
「はい…」
思いのほか聞き分けが良くて助かった。
御寝られるかとも思ったけど、悪い子ではなさそうだった。
魂も綺麗だったし、主を傷つける様な子には見えないんだけどね。