第6章 謎解き急行/それぞれの正体
***said風見
部署に戻ってきてからというもの、リュウさんの表情は険しくなるばかり
各所からのまとめの書類を片手にずっと頭を抱える様子でいる
報告書と戦っている同僚達も集中が途切れる度にリュウさんを見ては活力をもらおうとするが、あまりに険しい顔なので活力をもらうというよりは心配の方が大きいようである
自分を含め30歳以上が多く集まるこの部署は、10歳の少年に父性が働くのかもしれない
リュウさんはそこらの子どもの中でも可愛い部類に入る
あの叶音さんも公安とは思えない柔らかな顔立ちで、属性としては美少年である
29歳相手に美少年はやめろと怒られたこともあるけど、やはり美少年は美少年である
そんな叶音さんが幼児化したんだから、リュウさんが可愛いのは言わずもがな、公安の天使と言われ、おじさんばかりのこの部署の中で唯一の癒しとなっているのだ
リュウさんはいつも専用の研究室にいることが多い為、ここにはリュウさん用の机は置いていない
この部屋で作業をする時は降谷さんのデスクを使うことになっていて、今も降谷さん専用の大きな椅子にちょこんと座っている
……正直、可愛い
しかしあの顔は考えすぎて疲れている顔
そう思って温かいコーヒーを淹れた
カフェオレ好きなリュウさんは、コーヒーであればミルクたっぷり甘めが好みである
そしてそのコーヒーを一口飲んで笑った時の表情といったら、最高に天使すぎて同僚達のやる気も俄然上がったのだった
「風見さん、報告書お願いします」
「風見お疲れ、天使のことよろしくな」
「お先~」
順次報告書を終えて退勤していく同僚達
受け取った報告書を降谷さんに提出する前にチェックをしておこうと目を通す
早朝から働き詰めの身体で文書を読むのはキツいが、なんとか降谷さんが戻ってくるまでは気を張っておかないと…
時刻は20時を過ぎる頃となった
降谷さんは本当に戻って来るのかと疑問に思いスマホを手にすると、タイミング良く着信が入る
……降谷さんからだ
「風見です」
『僕だ。リュウに何度か連絡を入れたんだが返事がなくて。一緒にいるか?』
「はい、リュウさんなら…」
…寝てるー!!!
目を離した隙にペンを握ったまま寝落ちしているではないか!