第6章 謎解き急行/それぞれの正体
「ただいま…」
運転席から伸びてくる腕に肩を引かれ、零からのキスを受ける
たった3日離れていただけなのにこの感じが懐かしくて
もっと求めたい衝動に駆られるが、ほんの少しで零は離れていく
「そんな物欲しそうな顔しないでくれ」
無意識に追ってしまったことに気付き、顔に熱が集まるのがわかった
続きは帰ってからな、と車を出す零の横顔も見れず、動き出す窓の外を遠く見ながら火照りを鎮めようとした
「風見が心配していたぞ、リュウさんの顔が酷いんですって」
抜けた3日分の連絡を取った時に聞いたらしい
その時にオレが阿笠邸に行っている事も聞き、送迎を代わったそうだ
「でも思ったよりもスッキリした顔で良かったよ」
「うん、少し仮眠取れたからね」
さすがに沖矢さんの所で寝たとは言えないので、バレてしまう前に話を変えようと思う
「零は無茶しなかった?」
「問題ないさ。今回は情報収集と次の打ち合わせがメインだったからな」
3日も組織で行動していたんだからきっと次は大きな動きがあるに違いないと思っていたけど…やっぱり動くのか
「オレが聞いても良い話?」
「むしろ聞いてもらって、動いて欲しいことがある」
「オレも!?」
まさか組織絡みの一件に関わらせてもらえるとは思ってもなかった
零のことだから直接的に関わらせることはしないと思うけど、零の役に立てるなら本望、すっごく嬉しい!
「嬉しいが顔に出てるぞ」
「はぅ…」
人差し指で緩んだ頬を突かれ止められてしまった
「本題、入ってもいいかな?」
「はい、お願いします…」
「今週末にベルツリー急行でイベントがあるんだ。ミステリートレイン、聞いたことあるだろ?」
鈴木財閥がオーナーで毎年イベントをやってるあの列車のことか
確かチケットを取るのは難しいって聞いてるけど…
「その列車にシェリーが乗るかもしれないんだ」
赤信号中にスマホを渡され一つの動画を見ると、そこにはあの少年探偵団を火事から助けているシェリーの姿が映っていた
「これって…」
群馬の山中での動画ということ、少年探偵団が毛利探偵事務所のパソコンに送った動画だということを続けて説明してくれたが、オレの驚きはそこではない
「この人…本当にシェリーなの…?」