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星降る音に祈りを【DC降谷/幼児化男主】

第11章 紅の出張


「いや、謝らなくていいんだ。僕も同じ様なものさ」

零も同じく、同期の話題を出すとオレが悲しい顔をするからって控えようとしていたらしい
だから甘味処で部下が萩の名前を出した時に機嫌を悪くしていたんだなって思った

「お互い遠慮しちゃってたんだね」
「そうみたいだな」

露天風呂のすぐ傍にある紅葉の木から真っ赤な葉っぱが一枚、また一枚と、ひらりと湯に降りてきた
ぷかり浮かぶそれを数えてみればちょうど4枚…

「萩、陣平ちゃん、ヒロ、班長…」

それぞれ名前を呼びながら拾い集めて手のひらに並べた

「たまには俺達の話もしてくれ~!だって!」

手のひらの紅葉を見せながら言うと、零はクスりと笑って大きな褐色の手を重ね紅葉を覆う

「叶音…キスしても?」
「なっ…い、今、ですか…」

突然の要求に温泉で火照った頬がブワッと更に熱くなったのがわかった

「嫌?」
「嫌じゃ、ないけど…聞いてからするの珍しくて、その…」

モゴモゴ濁らせていると「ん?」と続きを聞きたそうに顔を近付けてくる零
重ねていない方の手は既に頬に添えられていて、こういう時に視線を合わせられないオレの性格をわかって直視してくるからズルいと思う

「珍しくて、何?」
「…恥ずかしぃ…です…」

耐えきれずにギュッと目を瞑ると、零はいつも初々しくて可愛いよ、だなんて言いながら瞼にキスを落としてきた
そのまま鼻先、両頬、そして唇の両端に移動したが、待てども待てども思っている所にキスは降りてこない

「れー…?」

紅葉を挟んで零の手を握り瞑っていた目を開けて首を傾げると、オレの反応を見て楽しそうな零の目とバチッと合った

「キス、するよ?」

改めて言われると恥ずかしいって言ってるのにまたしっかりと言う零は意地悪だと思いつつ、もう一度目を瞑って零を待つ

「フフ…」

待っても待っても何も無いと思ってうっすら目を開けると、見えてきたのは小さく笑い出す零だった

「…もう!するならしてよ!!」
「積極的だな」
「…っ!!!」

そういう意味じゃない!と怒ればしぶきが立ち、それを避けながら笑う零にオレもなんだか笑えてきた
集めた4人の紅葉は気付けば湯に浮かび直っていてオレ達の間で揺れている

「するならちゃんとして!」
「はいはい」

零の首に腕を回すと、不安定になった身体を零が腰に手を回して支えてくれた
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