第15章 決戦
決戦がついに始まってしまった。
両者は共に激しい攻防を繰り広げていて、まさに地獄絵図だ。
「タケミっち、大丈夫か!」
「おう!」
この決戦の行先はどうなる?
決戦を止められなかったオレはどう動くのが正しい?
必死に考えを巡らせる。
「よそ見してんじゃねえぞオラァ!!!」
「!?」
白い隊服の男が今にも殴りかかろうと襲ってきた。
さっきクレープが食べたいと言っていた永道だ。
「タケミっち!」
寸前のところで、千冬が永道の顔面に拳をぶつけた。
フラフラにながらもなんとか立ち向かおうとするが、相手は千冬。
喧嘩の強い千冬は、初デビューの新人をあっさりなぎ倒した。
最後にトドメの一発を叩き込もうとした千冬の腕を、誰かが受け止めた。
白い裾が、宙を舞う。
「……………永道、大丈夫か」
天使が、来た。
「…そ、総長…!す、ずみまぜんっ…!ごめん、なさいっ…!」
「よしよし、怖かったな。よく頑張った。
俺が来たからもう平気だ、後は任せて大人しくしとけ。
口の中切れたらクレープ食えなくなんぞ?」
「っ…!は、はい…!!」
そう言って、ボロボロ大粒の涙を流す永道の頭を、優しく自分の肩に抱き寄せる。
「…、さんっ……」
「千冬。テメェか、うちのかわいい新人ボコったのは」
「っ…」
顔を歪めて、さんをみつめ立ち尽くす千冬。
好きな人が、自分ではなく、相手を庇う。
それどころか、わかりやすく向けられる敵意に心が砕かれている。
千冬の気持ちを、この人は知っているはずだ。
それをなんの躊躇いもなく打ち砕く。
目の前の皇帝に怒りが沸いた。
「っうおおおおおお!!!」
「タケミっち!?」
「……はぁ」
オレの拳は宙を切り、さんの膝がモロに腹に入る。
体が動かない。そのまま、グラウンドの地に倒れ込んだ。
「ぐっ…あ……」
「死に急ぐなよ、花垣武道」
薄れゆく意識の中、千冬がボコボコにされている景色がボヤけてみえる。
助けたいのに、声が出ない。立ち上がりたいのに、力が入らない。
情けない、オレはなんでこんなにも…………
そして、こんなことを引き起こしたアイツを絶対に許さない、稀咲鉄太……
そこでオレの意識は途絶えた