第15章 決戦
開始まであと10分を切った。
「おい!!皇帝は来てねーのかよ!!」
ギャラリーが叫ぶ。
「はぁ…凹むなぁ、そういう野次」
そう春さんが呟くと、デス・ロウ側の人たちが笑い出す。
「あはは!いつものことじゃないすか、総長!」
「ぶふふ!」
「あ!おいお前ら!笑うな!!」
自分への野次すら笑いに変え、チームの空気を和ませ指揮を高める。
やはりこの人は、この大所帯を束ねる総長の器だ。
身長2mはありそうな大男が、声を張り上げた。
「聞けやギャラリー共!このお方が総長・さんだ!!」
その言葉に、観戦者達がどよめき出す。
続いて、さんが楽しそうに声を上げた。
「どーもー!皇帝です!身長163cm!体重48kg!ガリガリだけど頑張りまーす!!」
「ぎゃははは!!」
「よっ!俺らの総長日本一〜!!」
「マジで総長おもしれ〜〜」
指揮を高めるだけじゃない、メンバーの緊張を解している。
「…かっけえな、桜花さん」
「ああ…」
敵ながら、感心してしまう。
「永道!」
「はい!総長!!」
「今日はお前のデビュー戦だよなぁ!?」
「はっ、はい!!」
「終わったら何食いてぇ!?」
「え!?あ、えっと、く、クレープが食いたいです!!」
デス・ロウ側はこちらにはお構い無しに盛り上がる。
彼らはいつもこうなのだろう。
「永道!お前かわいーな!」
「女子かよ!」
「ふふ、いいじゃねえか、クレープ!何個でも奢ってやる!きっちり働けよ!!」
「はい!!!」
彼は多分新人で、初参戦なのだろう。
ガチガチに緊張していた顔が少し和らいでいった。
「さあ、時間だ」
始まってしまった