第19章 束の間の休息
フェリックス
「個人的な話が…あったからな」
レティシア
「話?」
言いたい事があるなら早く言え、と言葉を付け足しレティシアはフェリックスを見上げる。
するとフェリックスは腕を組んでいるレティシアの手首を掴み、そのまま自分の頬に触れさせ…離さないように彼女の手の甲をフェリックスの大きな手が覆う。
突然の事に驚いたレティシアは、目を丸くしてフェリックスのスカイブルーの瞳を見詰めたものの、はっとしてすぐに手を引こうとするも、びくともしない
レティシア
「ちょ…っ」
フェリックス
「レティシア」
レティシア
「…は?」
真剣な声音にレティシアは眉間にシワを刻みつつも手を引くのを止めた。
だが、外には約束の時刻に訪れた2人が…入れずにいた。
フェリックス
「俺は君がまだ好きだ」
レティシア
「……っ」
フェリックス
「君と夫婦になる事、まだ諦めていない」
レティシア
「……っ…勝手に言ってろ」
予想もしていなかった告白にレティシアの瞳が揺れ動揺を表すが、すぐに顔を横に背ける。
フェリックス
「俺は…フォンテーヌ家へ婚約を申し出た時、承諾されて嬉しかった。…幼くても君は誰よりも美しかった。君が俺の隣に居てくれる未来があると思ったら、舞い上がった。…それに─」
レティシア
「黙れ」
彼女に聞いて欲しくて並べていた言葉を、温度の無いレティシアの鋭い声が遮る。
それに僅かに驚いたフェリックスの手が緩むと、レティシアは彼の頬から手を下ろした。
俯き唇を噛み締め何かに耐えていたレティシアだったが、耐えきれなくなった感情を吐き出す為に顔を上げる
レティシア
「…ふわふわした服を着て…言われた通りに笑っている私が…!隣にいれば良いと思ったのか!?そんなの…そんなのお人形じゃないか!私はあんたを引き立てるアクセサリーじゃないんだ!」
フェリックス
「落ち着け、レティシア」
母に縛られ、暴力を振るわれ、その上…人の前では笑っていろ。ずっとずっと言われ続けてきた言葉が…思い出したく無かったそれが溢れ出て止まらなくなってしまった。
落ち着かせようとフェリックスがレティシアの両肩を掴むが、落ち着けないレティシアの両手がフェリックスの胸倉を掴む