第19章 束の間の休息
レティシア
「落ち着けるか!あんたも嘘吐きだったんだ!結局あの時も言いなりで…決められたから好きだと嘘つ……っ…!?」
当事者であるレティシアも、様子を窺っていたルシアンとリアムも…驚いて息を呑む。
胸倉を掴んだままの彼女をしっかりと腕に収めながら、レティシアの唇をフェリックスの唇が塞ぎ言葉を飲み込んだのだ。
ゆっくりと重なっていた唇が離れると、フェリックスは至近距離でレティシアの瞳を覗き込みながら声を掛ける
フェリックス
「……落ち着け。勘違いだ。俺はそのままの君が…レティシアが好きだ。今も昔も…決められたからじゃない」
フリーズしていたレティシアがフェリックスの低く響く声により戻ってくると、慌てて胸板を押して離れる
レティシア
「巫山戯るな。…五月蝿い口をキスで塞ぐってか?それなら止めろ。私達は何でもねぇんだぞ、こんな方法で黙らせるな」
フェリックス
「……すまない、気付いたら」
腕を組んで背中を向けるレティシアを見るフェリックスの瞳は寂しげに揺れていたが、彼女に見えるはずもなく。
今までのやり取りを見てしまったリアムは、良くも悪くも彼女の心を揺さぶるフェリックスが少しだけ羨ましくなったのは、心の内にしまいこんだ。
だが、フェリックスは信じて欲しかった。
彼女に婚約を申し出たのは、レティシアだったからだ。
出会った頃から目を引き付けていたのも勿論、事実ではあるものの…それだけが理由では無かった。
信じて欲しいからこそ…死ぬまで黙っておこうと思った話をしようと決める
フェリックス
「レティシア、聞いてくれ」
先程キスをされたレティシアはフェリックスを警戒し、振り向きはするものの彼との距離をとる
フェリックス
「さっきのは本当にすまなかった。…もう何もしない。だから、聞いてくれ」
レティシア
「……何だ」
暫くフェリックスの顔を見ていたレティシアは、大きな溜め息を吐き出して椅子に腰かける。それを見たフェリックスも、彼女とは距離を空けた椅子に座りレティシアへ視線を向ける