第18章 揺るがない物をくれた君
レティシア
「うっ…」
ノア
「え……」
ノアは目の前の光景が信じられず驚く。
庇うために彼の前に素早く身体を滑り込ませたレティシアの腹部に、ノアに刺さる筈だった鋭い刃がめり込まれていた。
レティシアは右手で長い柄を掴みながら、痛みに表情を歪めつつも刺している男に笑みを向ける
レティシア
「フィピテオ…っ」
「ぐっ…」
男の身体は縄で縛られその場に倒れる。
向こうで捕まえていたフェリックスが気が付き、彼の顔が青くなる
フェリックス
「レティシア…!」
レティシア
「たくっ…自分の部下くらい、命かけて…守ってみろ…ばーか」
ノア
「オレのせいで…っ」
レティシア
「違ぇよ…ありがとう、だろ」
冷や汗を滲ませながらも笑みを浮かべるレティシアはとても格好良かった。
レティシア
「く…っ」
ノア
「ちょっ…」
フェリックス
「馬鹿…!」
突然、刺さっていた槍を掴んでいた右手で引き抜こうとするレティシアを見ればノアは慌てて止めようとしたが、カランっと音を立てて血に濡れた刃が落ちる。
文句を言われたフェリックスも慌てて、レティシアに近付き呪文を唱えて出血を止める
ルシアン
「どうした……って、レティシア…お前また…!」
レティシア
「褒めろよ…説教は後で聞く」
ルシアン
「たく…。俺が外に運びます。あと少しなんで、ここは頼みます」
フェリックス
「…嗚呼」
気が付いたルシアンがその光景に驚いて、フェリックスに支えられているレティシアに近付く。
ルシアンが彼女を抱き上げて声を掛けると、フェリックスとノアは素直に頷いた。
既に人数が少なくなっていた事もあり、2人が再び参戦した事によりすぐに抗争は終了した。
制圧能力に長けている2つのグループが行った為か守護官にも抗争を起こした者達にも死者は出ず、軽傷のみで済んだ。
レティシアは重傷と判断されたものの、衛生師の手にかかるため軽傷扱いとなった