第13章 憧れに似ているあいつ
アシル
「簡単に勝てるんでしたよね?それなのに、ずーっとリアムから逃げてばかりだったじゃないですか」
先輩2
「…それは…」
アシル
「見誤りましたね、先輩。…さぁて、どうしようか」
先輩1、2
「ひっ…」
それから先リアムは背中を向けて何も見ていないフリをした。
恐ろしい奴だ、とリアムは思うのだったが…アシルには感謝をしている。
リアム
「いつも悪いな」
アシル
「は?何の事」
リアム
「俺のせいで喧嘩売られるだろ」
アシル
「はっ、そんな事。あの人達も分からず屋だよね。喧嘩を売るくせに勝てた事ある人誰も居ないじゃん。あのテスト大丈夫?」
鼻で笑いながらアシルは今までの先輩を罵る。
テストとは入学と進級、卒業前のランク決めの事を言っているのだろう。
アシルは、ランクがリアムより高いだけで実力が伴っていないのに喧嘩を売ってくる人達が嫌いだった。
その為、毎回リアムに協力をして叩きのめしている…それに対してリアムは感謝をしているのだ。
日々の厳しい訓練と同時に売られる喧嘩を買っていれば、リアムの運動神経は更に磨きがかかっていた。
リアム
「お前はネリネか」
アシル
「ん。…けど、納得出来ない」
リアム
「何だよ、嬉しくねぇのか?」
アシル
「嗚呼、ちっとも嬉しくない」
リアム
「おいおい、それ俺の前で言うか?」
色々とあったが無事に体力、技術共に成長した2人は晴れて卒業となった。
だが、アシルはずっと機嫌が悪いのだ
アシル
「何でお前が守護所勤務なんだ」
リアム
「は、俺…?」
アシル
「皆分かってねぇんだよ、お前の凄さを」
リアム
「凄くねぇから、守護所なんだろ。それに、守護所でも人を守れるし守護官には変わりねぇから」
卒業前テストの結果は、この2年で1度も変わらなかった。
力になっていると思っているのはお前だけだとリアムは言われている気分になったが、アシルのお陰でそこまで落ち込む事はなかった。
アシルはリアムが引く程に彼の実力を買っていた。
その理由がイマイチ分からないものの別に嫌な気分にはならなかった