第10章 ※シャボンディ諸島
キッドがすぐ、それに気がついた。
キッドがこちらに跳躍してきた。
「ーっ‼︎」
「うお⁉︎」
真鈴は素早く横に避けた。
キッドはそんなに早く真鈴が動けるとは思っていなかったので、そのままの勢いで壁にぶつかった。
「おいお前…見た目によらず、すばしっこいじゃねェか…‼︎」
思い起こせば、小学生の時から…逃げることだけ以上に素早かった。
ドッジボールをすれば最後まで残り、鬼ごっこをすれば最後まで生き残ったり…。
そんな真鈴に異名があった。
…‘‘最速の逃走女”。
「…逃げることだけは速いのよっ‼︎」
そんなことを思い出しつつ、ローの元へ走りながらそう言った。
ローは頭を抑えながら立ち上がろうとしていた。
真鈴はローを支え、身体を起こした。
「すまねェ…大丈夫だ。それより、手…‼︎」
「ーっ‼︎」
ローが真鈴の腕を掴む。
…確かに、手首から血が出ていた。
紐はさっき擦った勢いでとれたようだ。
「さっさとよこしやがれェェェ‼︎」
またキッドがこちらに跳躍してきた。
「…くっ‼︎」
「キャ⁉︎」
ローは真鈴を抱きかかえ、横に跳躍した。
「しつけェぞ、ユースタス屋…‼︎」
「当たり前だ‼︎ 今、俺の目の前に、探し求めていたモノがあるんだぜ? こんなチャンス、二度とねェよ‼︎ …だから早くその女よこせ‼︎」
「嫌だっつってんだろ」
「…だよなァ‼︎」
…二人のバトルが始まった。
ローは真鈴を抱えたままなので、上手く技が出せない。
しかも、刀も持っていない状態だ。
刀はさっきのキッドの蹴りで、部屋の端に滑っていったままだ。
…そのことに気付いているキッドは、ローに技を出させないように、休む暇なく攻撃を続ける。
「ちょっ…‼︎ やめてよ、船壊れる‼︎」
「止めて欲しけりゃ、てめェの血をくれ‼︎」
「だから…そんなことはっ、させねェって言っ、てるだっ、ろ‼︎」
(糞…ROOMさえ出させりゃ、こんなくだらねェこと、すぐ終わらせるのに…‼︎)
「…っ、やめろーーーーーっ‼︎」
『⁉︎』
真鈴が叫んだ。
二人の行動が止まる。
キッドは殴ろうと右手を突き出そうとしたまんま、ローはROOMを出そうとした手のまんまだ。