第10章 ※シャボンディ諸島
フードを軽く上にずらし、少しだけ真鈴の顔が見えるようにした。
ローは真鈴の片方の頬に手をあてた。
「っ⁉︎」
「…………真鈴」
「…え」
真鈴の顔が一気に真っ赤になる。
「…ぁ、えっと…どうしたの、急に…」
「…本当はキチンと名前で呼びたかった。」
「‼︎」
「そのキッカケをあいつに作られた、ってのが少し気に食わねェが…」
ローは照れを隠すように、頭を掻いた。
「ロー…ありがと、ちょっと嬉しい…」
「…っ‼︎」
真鈴がおずおずとローに微笑みかけながらそう言うと、ローの顔が見る間に赤くなった。
ふいっ、と真鈴から顔をそらす。
(……ヤバイ、心臓が…)
「船長ー‼︎ ベポが呼んでるぜー‼︎」
バーン、と盛大に扉を開け、シャチが部屋に入ってきた。
「あ、シャチさ…じゃない、シャチ‼︎」
漫画でよくある背景の、主人公が衝撃を受けたみたいに、シャチの背中に雷がピシャーンとおちた(風に見えた)。
「‼︎ よ、呼び捨て…っ‼︎」
「え、ごめん…やっぱり嫌だよね、前に一回だけ呼び捨てしたけど…」
「いや、嫌じゃねェよ‼︎ むしろ嬉しい‼︎ 船長とペンギンだけ呼び捨てなの、嫌だったんだよ〜」
「…言ったろ、全員呼び捨てでいいって…」
明らか不機嫌なローがくちを挟む。
(なんだよ、シャチ…‼︎ てめェはいつもイイ感じのところで邪魔しやがって…‼︎)
「じゃあこれからは遠慮なく呼び捨てで呼ぶようにするよ」
「そーしな、この船乗っている奴らの100%は喜ぶ。」
「全員じゃん‼︎」
「まぁね〜…あ、船長、そろそろ行かないとベポが…」
「…あぁ行く。真鈴、この部屋に絶対いろよ。また後で来る。」
「はい‼︎ えっと…行ってらっしゃい‼︎」
真鈴は恥ずかしそうに言った。
「‼︎ …あぁ、行ってくる。」
手をヒラヒラさせてシャチと部屋を出て行った。
扉が閉まる。
「…さてと。」
片付けの続きすっか、と言いながら、ほったらかしの袋を掴んだ。
そして、黙々と作業を続けた。