第10章 ※シャボンディ諸島
「ほらよ、水だ‼︎ …そんで、注文は?」
「酒。…お前は?」
「私は…水だけでいいです。」
「はいよ、酒ね。」
店主はカウンターの奥へと消えていった。
「本当に水だけで」
真鈴の方を向き、他にいらないのか、と聞こうとした。
…が、その本人はものすごい勢いで水を飲んでいた。
…もう空だ。
「おまっ…⁉︎」
「ぷはっ」
空になったコップを置く。
「そ、そんなに喉渇いていたのか?」
「……うん。」
苦笑いしながら言った。
(変に緊張して…男の人ばっかだし…。……ローにあんなこと言われて、動揺しないはずがないじゃない…)
『…大丈夫だ。俺がそばにいる。…お前には誰にも触れさせねェ…。安心しろ。』
…ローが真鈴を安心させるために先程言ったことだ。
(あの時は…恐怖感でいっぱいだったから、あれだったけど、今思い出してみると……すごいドキドキする…。けど、あれは私を落ち着かせるために言っただけよね…。ローは何とも思ってないはず…)
心臓がチクチクする。
スカートをグッ、と握りしめた。
「…。そんなに緊張するな。」
「…うん。…あ、すみません、お水下さい‼︎」
真鈴は近くを通りがかった店員らしき男に話しかけた。
「はい。少々お待ち下さい。」
カウンターの奥へと消えていったが、すぐ出てきた。
片手に酒、もう片方はお冷ポットを持ちながら。
「…酒です。」
「あぁ。」
ローはそっけない返事を返した。
そして、真鈴がいる方に回り込んだ。
「…水1杯だと、すぐなくなると思いましたので、ポットごと持ってきました。…よろしかったですか?」
「は、はい。大丈夫です。ありがとうございます。」
男に微笑みかけた。
…フードが邪魔で、男は余り顔が見えなかったが、微笑みかけられた、ということはすぐ分かった。
ローは真鈴の表情の変化にすぐ気がついた。
(何野郎に微笑みかけてんだよ…っ)
そんなローの嫉妬心に気付かず、真鈴はコップに水をつぎ、少し水を飲んだ。
ぷは、と一息つき、何か視線を感じ、左を向くと、そこにはまだ、男がいた。
目が合ってしまった。
「…お嬢様、何故フードをなさっていらっしゃるのですか?」
え…?」
「‼︎」
ローの酒を飲む手が止まった。