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dcst 夢小説 短編まとめ

第2章 【羽京】東の姫君とお見合い


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「まさか、あん距離で音拾えるとまでは思わんかったわ…『海自史上最強の地獄耳』やっけ?お陰で大醜態晒してもうたわ」
やれやれ、と桜子がお上品な見た目に似合わないバリバリの関西弁で言う。

「あはは、まあね…。というか、その地獄耳ってのは教えて無いんだけど…?」「その位、下調べ済みや」けろり、とした顔で言われてしまう。
昼間に仕事の話をした時は、完全に知らないフリをしていたのだろう。恐ろしいポーカーフェイスだ。東宮院家が『刺客』として送り込む気持ちも分かる。

「えっと…ここかな?」
そこは横浜の夜景が一望できる場所。名物の観覧車等が綺麗に視界に収まっていた。
「わぁ……」彼女がじーっと見ている。

「綺麗やなあ…あ」しまった、と桜子が慌てだす。
「スマホ川に捨ててもうたわ、写真撮れへん」「それは…自業自得じゃないかな」昼間までとはうってかわって自然な彼女に、思わず本音が出た。
「はは、アンタなかなか辛辣やな?まあその通りやけど!」じゃあ脳裏に焼き付けるしかないなぁ~、と、言いつつ夜景をジーッと見る彼女の後ろ姿に声をかける。…意を決して。

「また、来ればいいと思うよ」
「へ?……ああ、観光ね。でも私も仕事とか忙しいしなあ…」
「また、『デート』で来ればいい」
「…………へ?」彼女の動きが固まった。

戸惑う彼女の前に回り込む様に歩いて行くと、そのまま視線を合わせた。
「……東宮院桜子さん。僕と、お付き合いをして下さい」
「は?」
呆然としたかと思えば、今度は焦り出す。

「えーっと…私んちロクでもないから辞めといた方がええんやない!?なんでそうなんの…?」
「…家が良いとか悪いとかじゃないよ。
今日一日過ごしてみて、君自身が良かったんだ。
本当は黙っていれば僕なんて掌の上で転がせたのに…ちゃんと、向き合ってくれたから」
それに仕事の事も理解してくれるし話しやすいし…と言葉を連ねると、どんどん桜子の顔が紅潮する。

「ま、待て待てコラコラ!!」
「…返事は、出来たらでいいから」そう告げて去ろうとすると、彼女がぎゅ、とパーカーの袖を掴む。

「…イヤとは、言うてへんやろ。羽京君がええ人なんは知ってるし。別に籠絡がどうとかは少なくとも私自身は無いし……」そっぽを向いた彼女が、覚悟を決めた顔でこちらを見据えた。
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