• テキストサイズ

dcst 夢小説 短編まとめ

第2章 【羽京】東の姫君とお見合い


「そういえば、羽京さんは海上自衛隊でソナーマンをされていると伺いました」「は、はい」思考途中で話しかけられて少し詰まる。

「私も興味を持ったのでソナーマンのお仕事についてお調べしたのですが…とても特殊なお仕事だそうですね。よろしければ少しお話を聞いてもいいでしょうか」

これは…気を遣われている。本日2度目だ。話題が出てこないのも見越した上で、自分の話しやすい仕事方面に舵を切ったのだろう。聞かれた事に関して出来るだけ分かりやすく話す。

「1.5分隊…ですか。他の隊もあるのでしょうか?」「はい。海上自衛隊の担当職種で…」彼女は話を膨らませるのが上手い。それに、適宜相槌を打ちつつ話が終わらない様に疑問点や深掘り出来る所を指摘して来る。それでいて主導権は握らず、自分に自分の話をさせる流れだ。
こういった所が『知の東宮院』と呼ばれる所以なのだろう、と感心する。

「そうなのですね、とても勉強になりました」ふわりと笑いかけられる。「いえ。桜子さんのお仕事の話をお聞きしてもいいですか」僕の事ばかり掘り下げるのもなんなので…。

いいですよ、と軽く了承される。桜子は精神科医を目指しているようだった。何と言うか…意外ではあった。あの東宮院でアメリカの大学に行くクラス、となると外科医とかそういう方面だと思っていたからだ。

「ふふ、意外でしたか?」「あ、えと」またしても考えを読まれる。うふふ、と彼女が笑った。
「……周りからも言われました。外科医とかもっと他の分野に行け、と。東宮院家の人間として、実績の分かりやすい場所に行けと」ふ、と声のトーンが落ちる。

彼女の横顔は、少し寂しさに満ちていた。彼女も同じ様に、家に悩まされつつ進路を選んで来たのだ。

「あの、質問いいですか」「?ええ」「どうして、精神科医を目指したんですか」
これまでの話だと、彼女自身の意思はあまり出てこなかった。表面上の経歴のみだ。だからこそーー目の前の東宮院桜子の人物像が知りたかった。

「…あまり明るい話ではありませんよ」そう前置きすると、ポツポツと彼女は話す。
「…ちょうど私達の生まれた頃に大きな災害が関西であったでしょう」
ーー自身の脳裏に、かつて自衛隊として派遣された時の災害救助のシーンが蘇った。汚泥の街と泣き叫ぶ人の声と、自分たち救助側の必死のーー
ありとあらゆる、声。
/ 32ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp